12月1日から12月5日のNY株式市場は、11月の荒れた市場展開からは少し落ち着いた感がありますが(AIテーマによる市場上昇への懸念が若干落ち着いてきたため)、FOMCでの利下げ観測の変動で神経質な展開の中でも高値圏で推移しました。
概要&マクロ


1. FOMC:利下げ確率は高いが、内部は割れている
9月分PCE(コア)が2.8%と予想を下回り、消費者のインフレ期待も低下しており、インフレは着実に低下しているが、FRBのゴールである2%までは低下していない。
雇用市場は、失業保険申請は安定圏で、懸念されているほど悪化してはいない模様です。
こうしたデータを受け、市場は「12月会合での0.25%利下げ確率は8〜9割」という水準で織り込んでいます。(一時は100%の織り込みでしたが、若干後退)
依然、タカ派よりのFOMCメンバーが複数名「利下げ不要」のスタンスを崩していないこともあり、「利下げはするが、今後はデータ次第で一旦様子見」というメッセージが出る可能性もあります。
もともと市場は「3回目の利下げ+来年もある程度の利下げ継続」をかなり楽観的に織り込んでいるため、「利下げはしたが、今後に慎重なトーン」になった場合は、一時的な失望売りも視野に入れておいた方が良いでしょう。
2. 景気:減速シグナルと「ソフトランディング」期待の綱引き
43日間に及ぶ米政府機関閉鎖で、一部の経済統計の発表タイミングが乱れています。その中でも、重要な雇用統計が特に問題ですが、民間の代替指標では、雇用は「減速しつつも崩壊にはほど遠い」とい想定できるような内容となっています。
個人消費はブラックフライデー後も堅調ですが、信頼感はやや低下気味です。
総じて、「インフレは確実に落ちてきたが、景気はギリギリ減速にとどまっている」という、FRBからすれば理想的に近い状況です。
セクターの動き

今週のセクター間の特徴は、全体としてはグロース系>シクリカル系(景気敏感)>ディフェンシブ系、といった感じであったかと思います。
11月に吹き荒れたAIバブル懸念(AI関連銘柄による市場牽引に対する懸念)が少し落ち着いてきたこともあり、結果としては、グロース優位・AI/プラットフォーマーへの物色は継続している感じです。
12月のFOMC接近に伴い、金利低下と利下げ期待が続き、成長株・大型テックには引き続き追い風とはいえ、前週までの大幅な戻りの反動もあり、「上がった銘柄は一服」「出遅れセクターにローテーション」という動きが混在している印象です。
金利低下は本来ディフェンシブにもプラスですが、「景気ソフトランディング」期待が強く、リスクオン継続 → ディフェンシブ売りとくに公益・一部ヘルスケアはアンダーパフォームしています。
総じて言うと「グロース優位・リスクオン継続だが、インデックスは高値圏でスピード調整」という1週間であったと言うことが出来るかと思います。
個別銘柄の動き

グリーンでハイライトした銘柄は、この週にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新した銘柄です。iPhone17の売上が予想より高めであることが示唆されたアップル(AAPL)が最高値を更新しました。
また、景気敏感の特徴的な銘柄である重機・建機のキャタピラー(CAT)や、ホテルのマリオット(MAR)がAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新しているのは、利下げ期待による景気回復期待によるものと考えられます。
以下、この週の個別銘柄レベルでの注目の動きです。
1. 決算サプライズ
Ulta Beauty (ULTA):好調な決算と通期見通しの上方修正を受けて+12.65%急騰。
消費の「メリハリ化(旅行・サービス・一部高付加価値消費にはお金を使う)」を象徴する動きと考えられます。(この動きは様々な分野で見られるので、要注目です。
Victoria’s Secret (VSCO):赤字幅縮小と売上トレンド改善への期待から+18%高。構造的なブランド課題は残るものの、「最悪期は脱出か」という見方が強まっています。
2. M&Aテーマ:コンテンツ・ストリーミング再編
Warner Bros. Discovery (WBD):Netflixによる約720億ドル規模のハリウッド資産買収報道を受けて+6%前後上昇。
一方、買収側のNetflix (NFLX)は買収案をめぐるコスト懸念などから‐3%近く下落、週間では-6.8%の下落。
ストリーミング業界は、コンテンツ制作コスト増、利益確保の難しさから、「量から質へ」「絞り込みと統合」のフェーズに入っていることを、今回の動きが改めて示しています。
3. 資本政策関連
SoFi Technologies (SOFI):15億ドルの株式売出しを発表し、株価は-6%前後。
成長投資のための資本増強と理解する向きもある一方、個人投資家から見れば「またダイリューションか」という印象になりやすく、短期的な株価には逆風。
成長投資が最終的に収益につながるかどうか。少なくともその期待を持たせられるかどうかが、ポイントです。最先端技術の急速な進歩で、先行投資と思って投資したものが、収益化出来る前に陳腐化してしまうリスクをIT関連業界は抱えています。
これは、プラットフォーマーと呼ばれる巨大企業でも同じです。Facebookを展開するメタ(META)が、メタバース開発事業を縮小し、その分をAI関連投資に向けるという決断はこうした状況を反映したものと考えられます。どこにフォーカスして設備投資(Capex)をするかが重要な経営判断になっています。
今後の見通し:市場が気にしている点
1. 12月FOMC:「利下げ幅よりも、ドットチャートとパウエル会見」
市場はすでに0.25%利下げを高確率で織り込み済みで、2026年中盤までの追加利下げもあるという前提になっています。
したがって、今後の焦点は:ドットチャート(FOMCメンバーの金利見通し)です。
2026年末までの政策金利見通しがどれだけ下方修正されるかに注意です。
また、記者会見でのパウエル議長のトーンも重要です。「インフレは落ち着いてきたが、利下げペースには慎重」といったニュアンスだと、長期金利が再度上昇 → 高PER銘柄に調整の可能性もあります。
また、FRB内部の「利下げに反対する票(dissent)」がどれだけ出るかも、市場は注意深く見ています。ここが増えるほど、「ここから先の利下げペースは鈍い」というメッセージとして受け取られます。
2. インフレ・雇用のデータ次第で、年末までのボラティリティも
PCE、雇用統計、ISMなどのデータ次第では、「ソフトランディング期待の延長戦」「利下げ期待の修正による、年末の利益確定売り」どちらのシナリオもあり得ます。
ただし、指数レベルではすでに高値圏におり、「悪いニュース=即暴落」というフェーズではなく、まずは「良いニュース → 上昇は限定的」「悪いニュース → 下押し圧力」という、非対称なリスクプロファイルになりつつあります。
長期投資への示唆
結論から言うと、「騒がず、長期目線と分散方針を継続」で十分な週です。
1. インデックスは高値圏=「今さら全力で追いかける局面」ではない
S&P500は史上最高値目前、NASDAQも高値から-1.6%程度の位置
Russell2000も年初来+13%と、ようやくパフォーマンスが追いついてきた水準
ここから短期で一気に上を取りに行く局面というより、「利下げ観測の行き過ぎ修正」「年末のリバランス売り」が出やすいタイミングです。
2. 長期投資家にとっての現実的なアクション
① 基本方針:フルインベストメントをわざわざ崩す必要はない
3〜5年以上の投資期間であれば、「この週に少し高かった / 少し安かった」という差は、将来リターンにほぼ影響しません。
② 追加投資は:一括で追いかけず、時間分散でこれから新たに資金を入れる場合、数回に分けたドルコスト平均or 来年にかけての分割投資といった時間分散が理にかないます。
③ 分散の観点:大型グロース一辺倒から、小型株・バリュー・他セクターも視野に、ここ数年のリターンは、明らかに「メガテック・AI関連」に偏ってきました。
12月第1週はRussell2000がS&P500を上回るなど、小型株への物色がようやく戻りつつある兆しも見えます。
長期投資家にとっては、「S&P500やNASDAQ100+小型株やバリューのスパイス」というポートフォリオ構成が、リスク分散の観点で引き続き有効です。
3. まとめ:
「利下げ期待で走ってきた相場が、FOMCを前に一旦落ち着いた週。長期投資家としては、相場を『当てよう』とするより、分散+時間分散+ルールベースのリバランスを淡々と続ける局面。」
短期の「利下げゲーム」に参加しても、プロ同士のポーカーに後から入るようなものです。
長期投資家としては、ゲームのテーブルには座らず、テーブル全体(市場全体)を保有し続ける方が、期待値は高いと考える方が自然です。
後記
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