【米国株式週間アップデート】酔いが醒めて少し冷静になった 2024年11月16日

ファンド 投資

11/11~11/15の米国株式市場は、大統領選挙後の熱狂(トランプ・トレードなど)が醒め、トランプ次期大統領の公約が、経済・市場に与える可能性の懸念なども浮上し、下落しています。

懸念自体は、選挙前から言われてきたことなんですけどね。。。

市場全体&マクロ

前週、次期大統領選挙でトランプ氏が当選し、議会も上下両院とも共和党が過半数を占めるトリプル・レッド(レッド・スウィープとも)になりました。

2016年の際と似た状況ですが、前回と異なり、トランプ氏の公約は、財政を悪化させ、景気が比較的強い中では、インフレの再加速、金利高止まり(もしくは再上昇)のリスクがあるとの見方が広がりました。

早々に、公表され始めた、次期政権の主要閣僚が、公約の実現をより想起させるものであり、それを懸念した売りも起きています。

この懸念を売りにつなげたのが、パウエル議長が14日(木)に「現在、われわれが目にしている経済の強さにより、慎重な決定を行うことが可能になっている」と述べたことにあります。

即ち、金利の中立化に向けて、利下げを開始した(9月0.5%、11月0.25%引き下げています)が、景気は十分強く、急いで金利を下げるとインフレが再加速してしまうので、利下げのスピードはもっと遅くても良い、というメッセージです。

12月のFOMCでの利下げに関する市場の予想は、一時はほぼ100%まで行っていましたが、現時点では60%程度にまで落ちているようです。半々より少し利下げへの期待の方が強い。

こうした見込みが、市場の足枷になってきています。

この週に発表された、CPI、PPI、小売り売上高は、どれも景気が引き続き強めで推移していることを示したと判断され、上に述べたパウエル議長の発言とも相まって、利下げへの期待を弱める結果になています。

先週の選挙結果を受けて、市場のセンチメントが若干過度にブル(強気)に偏ってきたなと感じていたら、早速、パウエル議長のコメントをきっかけに不安定化し始めたようです。

このテーブルは、市場のセンチメント(市場心理)を測る指標を示しています。日次でずっとモニターしています。

VIXというのは、S&P500のボラティリティ・インデックスの先物の値です。これは、S&P500の価格変動性の大きさの先物取引の値になります。市場が大きく下落すると、これが上昇し、安定的に上昇し始めると低下する。市場参加者がそう予想して取引をしています。

この値が10台の後半であれば、まあ、通常の状態かなと考えられます。15を下回ってくると、市場参加者は、大きく下落することは当面ないと見ているということです。言い換えれば油断している状況。20を越えてくると、市場は先行きを心配している感じになってきます。

まず、この値が15を切っていました。

Put/Callは、市場で取引されているPut Option(売りのオプションです。市場が下げた時に利益が出る)の量をCall Option(買いのオプション。市場が上昇すると利益が出る)の量で割る。

即ち、この値が大きいと、Putオプションを買う人が多いと言うことなので、下落を見ている人が多いということになります。

これが、直近、0.6前後まで低下していました。概ね常に1は切ってきるのですが、0.7~0.8台くらいにいることが多い。これも下落を見ている人が減っている状況でした。(市場が下げたので、少し上がっています)

Bull/Bear というのは、Investor Intelligenceという会社が、投資推奨などを行う投資レター・メルマガなどのライターにアンケートした数字で、先行き上昇を見ている場合はBull、下落を見ている場合はBearということで毎週アンケートを取っており、その割合が示されています。

先日発表されたもの(毎週水曜日発表)が、Bull(強気)が60%を越えてきていました。前週が56.7%でしたので、大きく上昇しています。

これが60%を越えてくると、市場がかなりBull サイドによってきているという感じになります。

こうした市場心理を示す指標がBull(強気)サイドに偏ると、反転が起きることがままあります。

ただ、この市場心理の指標を先読みに使うのが非常に難しい指標です。強気に傾き過ぎているということは分かっても、いつ下落するか、という予想には使えないのが現状です。

ですが、こうしたことを知っておくと、取引するタイミングをどうするか、などの意思決定をより高度化出来るかなと思っています。少なくとも、市場の動きを理解する時には、役に立ちます。

この週の下落ですが、すぐに戻るかもしれませんし、しばらく継続的に下落する可能性もあります。市場が冷静さを取り戻すには、もう少し下げても良いかも、とは思いますが、これは何とも言えません。

いずれにしても、慎重な姿勢は必要かなと思います。

セクターの状況

金利が大きく上昇したことなどが金融にとってプラス(長期金利が短期金利より高い状況は、短期で調達し、長期で貸付・運用を行う金融機関にとって有利)であることで、他のセクターが苦しむ中で堅調に推移しました。

金利の上昇は、グロース系セクターにとってはマイナスです。

テクノロジーセクターでは、金利上昇に加え、サブセクターの半導体セクターが大きく下落した(-8.65%)ことの影響が大きいかと思います。

半導体セクターは、業績が期待通り出ていないことなどが材料視されて、大きく下落しています。AI関連は業績好調のようですが、それ以外の半導体は、半導体の市況サイクルの底からの反転に意外に手間取っているのかもしれません。

ディフェンシブ系のヘルスケアが、セクターとしては最も不振なセクターでした。糖尿病薬・やせ薬で大きく上昇したイーライ・リリー(LLY)やノボ・ノルディスクが期待ほどの収益が出なかったことや、より安い薬の開発のニュースなどで、下落したことなどの影響も出ています。

また、次期トランプ政権で、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏を保健福祉省のトップに指名しました。彼はワクチンに懐疑的であることで知られており、ワクチン・メーカーなどが、このニュースを受けて下落しています。

個別銘柄の状況

月・火くらいまでは、前週の名残もあったので、個別の銘柄では、高値更新の銘柄も出ています。

グリーンでハイライトした銘柄は、この週にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新した銘柄です。

ここのところネットフリックス(NFLX)の好調が目立ちます。

CEOのイーロン・マスクが、大統領選でトランプ候補当選に大きな寄与をしたこともあり、トランプ氏の当選確定後、テスラ(TSLA)は大きく上昇していました。

トランプ次期政権が、EV購入への補助($7,500、 約115万円)を止める方針というニュースで大きく下落し、値動きの荒い状況が続いています。

今後の見通し

市場は一旦冷静になりそうですが、20日(水)に大きなイベントを控えているので、なかなか判断が難しいです。

20日に、AIテーマの中心銘柄であるエヌビディア(NVDA)の業績発表があります。

アナリスト予想は、売上高が+83%増、収益が87.5%増を予想しています。5四半期連続で続いた3桁成長は流石に途切れる予想となっています。(こんなに大きな会社で、5四半期も続いたこと自体が驚異的です。)

ただ、これらとは別に、市場で囁かれている数字は更に高いものです。したがって、予想を上回る業績を発表しても、その上回り幅によっては、失望もしくは材料出尽くしということで、売られる可能性もかなり大きいと見ています。

市場がかなり貪欲になっています。こうした状況は適宜修正されていかないと、大きく下落する要因になりやすいので、注意が必要です。

予想を大きく上回る業績が発表されると、再び、市場はその強気度を上げていく可能性もあります。

後記

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