5月19日~23日のNY株式市場は、米国国債の格付けが最高ランクを失ったことから債券市場が混乱し、金利が上昇し、しかも、関税を巡る貿易交渉が思うように進まず、苛立ったトランプ大統領の発言が市場を混乱させています。
今週末は、26日がMemorial Day(戦没者祈念日)でお休みですので、Long Weekend(3連休)です。投資家は、せっかくのLong Weekendをトランプ大統領に台無しにされた気分だろうと思います。
概要&マクロ
「解放の日」以降の暴落分を回復した後、更に買い上がる材料に欠ける状態かなと想定していましたが、その中で、米国の財政悪化を材料として、Moody’sが米国国債の格付けをAaaからAa1に1段階下げました。これにより、主要3格付け機関(Moody’s、S&P、Fitch)のいずれにおいても、最高格付けを失ってしまいました。
世界で最も安全な資産という位置付けでしたので、動揺が債券市場に走りました。とはいえ、米国債(米国金利)が世界の金融市場の基準の金利であるという位置付けは変わらない、ということではあります。
この格下げにより、債券市場では米国国債売り(→金利上昇)が起きました。このような原因(悪い金利上昇)では、為替市場でもドル売り材料になりました。(通常は米国金利上昇はドル買い要因)
トランプ大統領は減税案など財政支出を伴う大型の政策を打ち出しています。DOGEによる政府支出削減策や関税による歳入増加策とパッケージで行うことで、財政支出を膨らませることなく、進めることを想定していたと考えられますが、政府支出削減策も十分な成果を上げているとは言えないような状況のようですし、関税に関しても必ずしも順調には進んでいるとは言えない状況です。
トランプ大統領としては、この困難な状況を早期に打開したいはずです。
それが、EUへの50%追加関税の話だったり、iPhoneをアメリカで製造しないなら25%の追加関税をかけるぞ、といった強迫にもつながっているかと思います。
良いディールをするためのブラフ(はったり)だと解釈する人も多い。そうかもしれませんが、良い迷惑でもあります。
単なるブラフだと割り切って考えてしまうと、下がったところは「買い」という行動も出やすい。
個人投資家には4月の大きな下落の際に押し目買いスタンスで臨んだ人も多かったようです。
金利は取り敢えず、落ち着きを取り戻してきています。一方で、為替でのドル売りがジワジワ進んでいます。そして、それに呼応するかのように、金価格が再び上昇しています。
当面、中央銀行(中国、ロシア、インド他)の購入に支えられていることもあり、金価格は大きく下落することはないかなと。
セクターの状況
市場全体としては軟調でしたが、明確な特徴があった訳ではないようです。全面安の中ではよくある現象ですが、消費必需品(Consumer Staples)は相対的に強かった。
テクノロジーは、アップル(AAPL)が当然ながら大きく下落(大統領からの脅しによる)したので、大きなインパクトがあります。
携帯機器への追加関税の話が、より広範な電子機器への追加関税に広がるのではないかとの懸念を呼んだこともテクノロジーの軟調の原因となっています。
個別株の状況
こうした軟調の中ではありましたが、4月から続くネットフリックス(NFLX)の好調が止まりません。この週も、21日(水)にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新しています。
市場が軟調に推移した成果、ディフェンシブの代表格のヘルスケアはまあ相対的に堅調。上のテーブルでも、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)とユナイテッドヘルスケア(UNH)はプラスです。
UNHはその前に暴落とも言えるくらい下落しているので、そこからの反転とも言えます。同じ薬品でもイーライ・リリー(LLY)はそれまで好調であったこともあり、やはり大きく下落しています。利食いを浴びやすいということかもしれません。
上で述べたように26日(月)はMemorial DayでNY株式市場は休場です。28日(水)の引け後に、AIテーマの中心銘柄でもあるエヌビディア(NVDA)が収益を発表します。
規制・政治環境がNVDAには、あまり良くない状況が続いています。その中でもUAEへの大量のAI半導体供給の話など、なかなかしぶとくそのポジショニングを固めています。
NVDAの業績は、目先の市場のセンチメントにも影響を与えそうですので、注目です。
今後の見通し
政治的な動き(トランプ関税)と、それが経済にどれだけの影響を与えるのかが、非常に不透明であるため、引き続き、トランプ大統領の発言を受けた上下動の激しい動きが続くかと思います。
ただ、上でも述べた通り、交渉を有利に進めるためのブラフである可能性が高いと見られているため、トランプ大統領の発言に右往左往しても、単なるロッキング・チェアと同じになる可能性があります。(大きく動いていいるようで、結局のところ同じところにいる)
ニュースのヘッドラインに踊らされず、落ち着いて状況を見守るのが一番かと思います。
4月に大きく下落した時こそ、出来高が大きく増えた日がありましたが、その後はあまり大きな出来高を伴って大きく動いた日がありません。
先日、市場のデータをずっと分析している運用会社の人と話す機会があった際に、「解放の日」以後、メディアでは「アメリカ売り」(株、債券、ドル)を売る動きについて報道されていたが、実際にどうだったのかを聞いたところ、あまり実弾は出ておらず、先物中心の投機的な動きであったとその会社では解釈しているようでした。
それは、NY株式市場、NASDAQの出来高の推移を見ていても、大きな動きの割に出来高が大きくないという印象に合致するものでした。
ということは、長期目線の機関投資家はあまり動いていない、静観しているということかと思います。
同じ機関投資家でも、トレーディング中心に行っている金融機関や、ヘッジファンドなどは動いていたということかなと思われます。
目先を見ていると船酔いします。遠くを見ていれば、気にならなくなります。
後記
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