期待と警戒が交錯した1週間 2025年8月2日
今週の米国市場は、貿易交渉の進展やハイテク企業の好決算により週初は強含みで始まりましたが、週末にかけて発表された米雇用統計が波乱を呼び、市場は急反落。株・為替・債券・コモディティ全てが大きく動く「転換点」のような週となりました。
概要&マクロ:ドル高から急転直下のドル安へ
• 月曜〜水曜にかけて、EU・中国との通商交渉進展が期待され、S&P500は一時6400台を突破し史上最高値を更新。NASDAQ、NASDAQ100も最高値を更新。しかし、高値警戒感やFOMC後のパウエル議長の「利下げは未定」発言を受けて失速。
• 木曜発表のPCEコア価格指数はインフレ圧力の継続を示し、金利上昇・円売りが加速。
• 金曜の雇用統計で雇用者数が予想を大幅に下回り、利下げ確率が急上昇。ドル円は2%を超える円高(147円台)となり、米国株も大幅安となりました。
経済指標・政策要点:
• FOMCは政策金利を据え置き(4.25〜4.5%)(雇用統計が発表される前のタイミングでの決定)
• 7月非農業部門雇用者数:+7.3万人(予想:+10.4万人):7月の数字が予想を下回ったことよりも、5・6月の数字の大幅下方修正が市場にとって大きなサプライズになりました。
• 失業率:4.2%(前月:4.0%)
• PCEコア価格指数:前年比 +2.9%(予想:+2.7%)
インフレが最後もう少し下がって欲しい中で、関税の影響も懸念され、インフレの鎮静化が停滞。その中で、堅調と思われていた雇用市場が既に急減速しつつあった事実が発覚しました。
セクターの状況
週ベースでは、前半の貯金もあり、グロース系が意外に堅調。ディフェンシブ系が軟調ですが、流石に金曜日の大崩れで公益(Utilities)は週間トップでした。
• 「マグニフィセント・セブン」やメタ(META)、マイクロソフト(MSFT)などの好決算銘柄がテクノロジーセクターを牽引。
• 一方、トランプ大統領による製薬会社への薬価引き下げ要求を受けてヘルスケアセクターは下落。
• 資源・エネルギー関連も週末のリセッション懸念で軟調に推移。
個別銘柄の状況
グリーンでハイライトした銘柄は、この週にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新した銘柄です。木曜日までに達成しています。(金曜日に市場が崩れているので、金曜日は下落しています)
• Amazon:第2四半期は好調な業績でしたが、第3四半期の見通し(ガイダンス)が市場予想に届かず、8%以上の下落。
• Meta:好決算を受けて一時12%高。
• Microsoft:好決算を受けて、時価総額が一時4兆ドルを突破。
• 話題になったのが、IPO銘柄ソフトウェアメーカーのFigma(FIG)。同銘柄は驚異の初日+277%高と投資家心理を刺激。(7月31日に上場)
今後の見通し:市場の「前提」が崩れた今、どう対処すべきか
7月の雇用統計で注目すべきは、表面上の+7.3万人という数字だけではありません。
むしろインパクトが大きかったのは、5・6月分の雇用者数が合わせて約26万人も下方修正されたという事実です。
これは、米労働市場が「静かに、しかし確実に」弱まってきたことを示すものであり、ここまでのマーケットの楽観シナリオ──
「インフレは粘着質だが、雇用は堅調。FRBは時間をかけて利下げできる」
という「最も居心地のよい前提」を、大きく揺るがす結果となりました。
また、FRB内部では7月のFOMCで2名の反対票(利下げ支持)も出たばかり。9月の利下げ期待が急騰したのは当然として、そもそものFRBの戦略的オプションが一気に狭まりつつある状況です。
統計の信頼性という「不確実性」
下方修正幅があまりに大きかったことで、経済統計の信ぴょう性にも疑義が生じています。つまり、投資家が依拠してきた「データに基づく政策判断」というルールそのものが、揺らぎかねないという点で、これは単なる雇用悪化以上の意味を持ちます。
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投資家にとっての示唆:リスク・プレミアム再評価の時期
4月2日の「解放の日」以降、株式市場は“金利は下がる、業績は堅調”という前提で上昇を続けてきました。
しかしその大前提が崩れた今、短期的には以下のリスクが顕在化します:
中期視点:テーマ選別型ポートフォリオの重要性が増す
リスクを再評価する流れは、バリュエーションの調整やセクター間の選別を加速させます。特に重要となるのは以下の2点です:
• 景気鈍化下でも業績を維持・拡大できる「構造成長テーマ」(例:AI、ヘルスケア、インフラ再構築)
• 逆風下でもキャッシュフローが安定し、配当や自社株買いで株主還元できる企業
中長期で投資継続する場合、“βの相場”から“αを取る選別”へと舵を切ることが必要な段階に入ってきたかなと思っています。
後記
金融市場は、ただ単にニュースを追っているだけではついていけないほどのスピードで動いています。大切なのは「今週何が起きたか」を理解しながら、「今後どこに向かうか」を読み解くことです。
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