前回までの2回で、分散投資のお話をしました。
今回のリバランスは、分散投資を行う上で、非常に大事な投資行動ですので、ご理解いただけるとありがたいです。
リバランスが如何に重要であるかを、例を使ってご説明していきたいと思います。
ある資産、AとBの二つがあるとしましょう。
そして、それぞれが次のように動く資産だとしましょう。
1年目 | 2年目 | |
資産 A | +100% | -50% |
資産 B | -50% | +100% |
この資産Aと資産Bを50万円ずつ100万円投資したとしましょう。2年目の終わりにどうなっているでしょうか。
スタート時 | 1年目末 | 2年目末 | |
資産 A | ¥500,000 | ¥1,000,000 | ¥500,000 |
資産 B | ¥500,000 | ¥250,000 | ¥500,000 |
合計 | ¥1,000,000 | ¥1,250,000 | ¥1,000,000 |
元に戻っており、全然増えも減りもしていません。
では、1年目が終わったところで、資産Aと資産Bのウェイトを同じにして(スタート時と同じように)、2年目をスタートさせたらどうなるでしょうか?
1年目末には、資産Aは\1,000,000になっています。そして、資産Bは\250,000です。
従って、合計\1,250,000の資産になっています。これを最初の配分率と同じ50%ずつ再配分します。
そうすると、資産Aは\625,000、資産Bも\625,000になります。
スタート時 | 1年目末 | 2年目スタート時 | |
資産 A | ¥500,000 | ¥1,000,000 | ¥625,000 |
資産 B | ¥500,000 | ¥250,000 | ¥625,000 |
合計 | ¥1,000,000 | ¥1,250,000 | ¥1,250,000 |
この状態で2年目を経過させると次のようになります。
2年目スタート時 | 2年目末 | |
資産 A | ¥625,000 | ¥312,500 |
資産 B | ¥625,000 | ¥1,250,000 |
合計 | ¥1,250,000 | ¥1,562,500 |
途中で何もしないか、ウェイトの調整を行うかで、大きな差が出ます。
この最初に決めた配分割合に戻す行動を「リバランス」と呼びます。
かなり極端なケースでお話しましたので、驚かれたかもしれません。
ここまでのことはないとしても、この積み重ねによる差はとても大きい。
国内株・債券、海外株・債券の4つの投資先だけでも、それぞれの1年のパフォーマンスは大きく異なるので、最初に1/4ずつと決めていても、そのバランスは1年経ったところで大きくずれてしまうことが頻繁に起こります。
これを元の配分に戻すのがリバランスです。
リバランスの重要性まとめ
リスク管理
ポートフォリオ内の資産クラスの割合が長期間にわたって変動しないようにすることで、リスクを管理できます。
例えば、株式市場が好調な期間には、株式の割合が増えてしまい、ポートフォリオのリスクが高くなる可能性があります。
リバランスによって、リスクのバランスを保ち、投資リターンとリスクのバランスを最適化することができます。
リターンの最大化
ポートフォリオのリバランスは、投資対象の割合を調整することで、リターンを最大化する機会を提供します。
例えば、好調な資産クラスに対して過剰に投資している場合、他のパフォーマンスの低いクラスに資金を移動することで、将来的なリターンを向上させる可能性があります。
分散効果の維持
分散投資の目的は、異なる資産クラスに分散することで、全体のリスクを分散し、ポートフォリオの安定性を高めることです。
しかし、市場の変動や投資の成果によって、投資対象の割合が変動する場合があります。
リバランスによって、ポートフォリオの分散効果を維持し、目標のアセットアロケーションを維持することができます。
自己制御と感情の排除
ポートフォリオのリバランスは、感情に左右されず、計画に基づいた投資戦略を実行することを可能にします。
市場の変動や投資対象のパフォーマンスによって、投資家は感情的になり、急な売買の判断を下すことがあります。
しかし、リバランスは定期的に実施される計画的なプロセスであり、感情を排除し、冷静な判断に基づいて行動することができます。
具体的にどうするか
個人のレベルでは、投信だとしても、上昇したものを少し売って、下落したものを買い足すというのは、取引コストがかかります。
従って、このリバランスについては、極端な差が着いたときに行うということで良いかと思います。
DC(確定拠出年金)などで、取引コストがかからないようであれば、きっちりと調整して良いかと思います。
退職口座で行っている投資ではない場合は、取引コストもあるので、あまり細かく調整はせずに大きくズレた場合、5%とか10%を越えるような場合にのみリバランスするという方法を取るのも一つのやり方です。
また積立投資であれば、積み立てる金額の配分でゆっくりと調整していくというのも一つの方法です。
いずれにしても、このリバランスは、上昇しているものを売り、下落したものを買うという逆張り的なものになります。
なかなか普通ではしにくいものですので、その見返りも大きいと思っていただいて良いかと思います。
目安としては、1年に1度定期的に配分ウェイトをチェックして、5%以上ズレていたら、調整を行う、あるいは調整を行うことを検討するということにしていれば良いかと思います。
これを機械的にやるだけでもポートフォリオ全体としての効率性(パフォーマンスの向上、リスクの低減)が図られるかと思います。
コメント