投資を始める前に、必ずと言ってよいように、
「投資にはリスクはつきもので、大きく儲かることもあれば損することもある」
ということをお聞きになったかと思います。
そんな当たり前のことではあっても、長く上昇相場が続いたり、下落相場が続くと忘れてしまったりします。
株式市場にはリスクがある
2008年の金融危機(所謂リーマンショック)以後、株式市場は基本的に上昇を続けてきました。
そのため、株式市場には下落リスクもあるということを忘れてしまっていた人、あるいは下落相場を未体験の人も多いのだろうと思います。
レバナス(ナスダックの変動の2X、3Xの動きをするファンド)が投資として一番よく、それをやらないやつはバカだ、的なコメントがSNSでよく言われていました。
今はその人たちはどうしているのでしょう。
人間は、理性では市場は上下動するものだと理解はしていても、潜在意識的には、現在の状況がそのまま続くと思いがちです。
現在の状況がずっと続くと思って行動してしまっていると、状況が変わった時に痛い目に会ったり、状況の変化に大きく乗り遅れたりします。
人間にはそうした特性があります。
また、しょせん我々人間に未来を正しく予想することは出来ない。たまたま当たることはあるだろうが、常に正しく予想し続けることは不可能です。
プロの投資家も、正しく予想することに毎日しのぎを削っていますが、正しく予想し続けている人は皆無です。
正しく予想出来るかどうかが、高いリターンを生む訳ではないのです。
(このことについては、いずれまとめてお伝えしていこうと思っています。)
現状の延長で未来を思い描いてしまう人間の性向や、しょせん未来を正しく予想し続けられないという事実は、投資をする上では克服していかなければならない大きな問題です。
そもそも投資というのは、将来に向けて価値を創造していくことなのですから。
その課題克服のために、投資の理論出てくるのが、分散投資です。
リスクを抑制しながらリターンを確保することを可能にする分散投資が、投資の王道であると説明されているかと思います。
分散投資が投資の王道である
分散投資は有力なリスク抑制の方法でもありますが、使い方を間違えると、努力を無駄にしてしまうことにもなりかねません。どのレベルでどの程度するのが良いのか、ということを考えておく必要があるかと思います。
複数の資産(投資対象)があったときに、最大のリターンを得られるのは、一番リターン予想が高いものだけに投資すること。当たれば、大儲けです。
しかし、外れると大負けということもあります。
- その予想が外れたとしても、ある程度のリターンを得られるために、次にリターンの高そうなものを入れる。
- ベストではないが、1番リターンが高いと思われるものが外れても、2番目が当たってくれれば、そこそこのリターンになる。
- こうして、もし予想が外れても、ある程度のリターンを取ることを確保するために投資対象を増やしていく。
これが、分散のそもそもの考え方です。
予想が外れても、別のものでカバーできるようにしておく、ということです。
あるいは、大きくやられるものがあっても、その影響を小さくする、ということです。
このように考えていって、複数資産を自分の相場観に沿って保有割合を決めていけば良いのですが、これはプロでもなかなか難しい作業です。
金融の様々な市場の特性や動き、経済の動向などを知り、それぞれの相関なども考慮したり、全体のリスク(価格変動性)予測などを考慮して決めていく。
これは個人投資家がやれるレベルの話ではないかと思います。
分散投資は大事だと言う人は多くても、具体的にどのように分散投資をすべきかを教えてくれる人が少ないのが現状です。
4つの資産クラスへの投資を行う
まずは、国内・海外の株式、そして同じく国内・海外の債券の4つの資産クラスを対象にするところから、スタートしてはいかがでしょうか?
これに金などを加えても良いかと思います。
国内外の株式と債券ということで、4つの資産クラスへの投資を行うことにしましょう。
- 国内株式
- 海外株式
- 国内債券
- 海外債券
4つの資産クラスへの投資配分を考える
次はその配分です。
配分の割合は、それぞれの人の資産の状況、投資の目的、リスク耐性などによって異なってきます。
そう言われても自分では判断できないと言う方も多いかと思います。むしろそれが普通かと思います。
株式と債券の割合の黄金比として6:4という比率がアメリカでは目安として言われてきました。
これを使っても良いですし、国内資産と海外資産を半分ずつ、株と債券を半分ずつ、という4分割を出発点としても良いかと思います。
これに自分の好みや相場観を入れて配分に軽重を付けていくというカスタマイズをしていければ、十分かと思います。
相場観でそれぞれの資産への配分割合を変える場合に大事なのは、ホームラン狙いで決め打ちせずに、主要資産(株・債券、日本・海外、金など)のそれぞれを少しでも良いので分けて持つことが大事です。
長期でリスクもある程度とれるなら、株のウェイトを高くしても良いです。
そして経済の成長性に関しては日本より海外の方がありそうと考えるなら海外を少し多めにしてみる、などの変更を加えても良い。
日本の復活に期待して、日本を少し多めにしてみるというのも良いかと思います。
こうした自分なりの考えを入れて出発点のウェイトを変更していく。
合計は100%なので、どこかを増やすとどこかを減らす必要が出ます。
相対的な比較が重要になってくることを理解しましょう。
ともかく、分散のイメージをまず作るところから始めましょう。
日本の株・債券、海外の株・債券を等しく1/4ずつ持つのは、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオの配分です。
長期的な投資の割には債券の割合が高いですが、安定的に増やすという目的もあるので、債券が少し多めになっているかと思います。
分散投資は定期的な見直しをする
分散投資でもう一つ忘れがちなのが、定期的な見直し、リバランスです。
1年経ってそれぞれの資産の動き方の違いから、当初決めた配分割合から離れてしまいます。
その乖離が許容範囲(各自で決めれば良いです。±5%以内とか)を越えたら、もとに戻していくことです。それをリバランスと言います。
これは、通常であれば1年に1度程度であれば良いかと思います。
許容範囲を超えていなければ、そのままでも構いません。
これをすると大きく上昇した資産クラスは利食いし、ウェイトが小さくなってしまった資産クラスは追加投資をする、ということになります。
これが長期的にはとても重要になってきます。
このリバランスの効用もいつかお話していきたいと思っています。
こういう行動は、あまり直感的にできるものではありません。
上がっているものを打って、下がっているもの(あるいは上がっていないもの)を買うという逆張り的な行動ですから。
分かっていてもなかなか出来ない。
したがって、ルール化して行くことが大事です。
最初から4資産クラス全てに投資出来れば良いですが、難しければ少しずつ時間差で初めていくのも一つです。投資信託を使えば、最初から少額でも全ての資産クラスに投資することが可能です。
また、日本の債券については、円キャッシュ(預金)などで代用するという方法もあります。
今回のお話は、かなり一般化した話になっています。具体的な分散の方法は、個々人の状況によって異なります。
投資は自己責任です。本稿は、具体的な投資を勧めるものではありません。投資を行う際にはご自身でよく考え、理解された上で、自己責任で投資を行ってください。
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