【米国株式週間アップデート】大荒れ。しばらく慎重に 2024年7月20日

投資

この週(7/15~19)は、大荒れの週でした。それは、様々な要因が重なって起きたものです。これが、これまでの流れの中での一時的なショック(hiccup;しゃっくり)なのか、相場の転換点なのかは、まだ判断が付かない。

ただ、これまで以上に警戒が当面は必要になるだろうとは言えそうです。

市場全体&マクロ

週前半は比較的穏やかな感じでしたが、17日水曜日が転換点となり、テクノロジーなど大型成長株が大きく売られ、6週続いたNASDAQの週間ベースでの上昇は、急ブレーキで派手に転んだ感じになっています。

そのきっかけは、バイデン政権の動きや、共和党の大統領候補として指名されたトランプ前大統領の発言です。ロテーションが(物色の移行)が起こり始めたかと思われている状況でしたので、反応もより大きくなったかと思います。

水曜日にASMLが業績を発表し、売上が予想に達していなかったことで売られた。この日に、バイデン政権が、中国への最先端テクノロジー輸出に関して、制限を更に強くする方向で動いているとのニュースが流れた。既に、かなり制約を受けている中で、更なる制約を課されるという不透明感で大きく下落。(ASMLは、最先端半導体の製造には不可欠の製造装置を作っています)

加えて、トランプ氏が、アメリカが台湾系企業を保護しているので、台湾はアメリカに謝礼を払うべきだ、というような趣旨の発言をしました。台湾セミコンダクター(TSM)が世界一の半導体製造会社であり得るのはアメリカのおかげ、ということでTSMに何らかの税金を課すように受け取られ、AI需要で好決算にもかかわらず、株価は下落しています。

これらの一連の出来事を受けて、これまで上昇を牽引してきた半導体セクターを売って他に乗り換える動きが加速したと考えられます。

単純に乗り換えではなく、売って様子を見る動きも出ているかと思われます。それは、共和党が、トランプ氏が正式に共和党の指名候補となったこと、副大統領候補がJDバンス氏になった一方で、民主党側が、バイデン大統領の候補指名を巡って、混乱が続いていることなどが、不透明感を増していることが影響していると考えます。

ただ、大きく下げているとはいえ、下げの初日であった7月17日水曜日は、出来高が多めであったものの、大きく下げた木・金は、出来高が減っており、様子見の投資家も多いのではないかと想定されます。

バイデン大統領が、再選を目指すとしても、ここで選挙戦から撤退し、別の候補者を立てたとしても、今の流れだとトランプ氏の返り咲きの可能性の方が少し高いかなと(選挙制度自体が米国の現状から言えば、共和党に有利な形にそもそもなっているので)思っています。

トランプ氏がドルが強すぎる(これは対円での話かな)と発言したことで、為替市場でも慌てて円高ドル安方向に動きました。日本の当局の介入よりも効果は高そうです。

セクターの状況

半導体が1週間で-8.77%と叩きのめされたこともあり、テクノロジー、コミュニケーション、消費一般・サービスなどのグロースセクターがかなり酷い目にあっています。

それでも年初来のパフォーマンスはこれらのセクターが依然上位を占めています。そのため、まだ様子見をする余裕のある投資家も多いかもしれません。

更に下落して、そうした投資家が売り始めると、短期的には、ほぼFree Fall(自由落下)状況になる可能性もゼロではない。

市場が暴落するときは、そういうことも多い。買いチャンスも訪れるが、どこが底かを見極めるのは至難の業です。押し目買いと思ったら、底が抜けてしまうことも多いですので、お気をつけを。

個別銘柄の状況

グリーンでハイライトした銘柄は、この週にAll Time Highと引け値ベース最高値を更新した銘柄です。テクノロジーではアップル(AAPL)のみ。ユナイテッド・ヘルスケア、ハイアット、JPモルガンなどがここに入っているのは、やはりロテーション(マーケットリーダーの交代)が起きつつあるのかもしれないことを示唆しているかと思います。

マグニフィセント7(上のテーブルの上部)は、この週、全体として―5%の下落だったようです。

これら超大型銘柄がそれだけ落ちれば、市場全体(主要インデックス)が下落するのは当然と言えば当然です。

金曜日に世界的に混乱(IT障害)を引き起こしたクラウド・ストライク(CRWD)は、オープン前の場外取引では2割近く下落していましたが、最終的には-11.1%の下落で引けました。

CRWDは企業向けのソフトウェア会社。ソフトウェア更新で不具合が発生し、ウィンドウズ(OS)を使っているコンピューターを機能不全に陥らせることになりました。

ウィンドウズは、世界中で、しかもビジネスの世界では、ほぼ標準的なインフラでもあるので、混乱が世界中に広がりました。

世界中がつながっていることを再認識しましたが、つながっているが故に、どこかで不具合が起きると世界中に広がる。こうしたことは今後も起きるんだろうなと思われます。(頻繁には起きないと思いますが)

今後の見通し:

今後の見通しと言われても、不確定要因が多すぎて、そんなもん分かるかい、という状況です。

もっと言ってしまうと、どんな時でも、想像・予想は出来ても、未来のことなので分からない、というのが正しい答えかと思います。

たぶん、こんな風になるんじゃないかと考えるのが妥当ではないか、という程度のものと考えてください。

現在の市場を左右する要因

1.FRBの金融政策の動向:いつ利下げを開始するのか?

これに影響するのが、インフレの鎮静化動向であり、雇用状況の動向です。

利下げのタイミングによって、景気に与える影響度も異なるので、重要です。

2.企業業績:高い期待に応え続けられるのか?

AI関連企業を始め、大型成長株にはかなり高い期待がかかっています。予想を少し超えたくらいでは、市場は満足せず、驚かせるくらいのサプライズを出さないと上昇し続けられないくらいの状況になりつつある。市場参加者がかなり貪欲になっており、危険な兆候です。

3.大統領選の行方:誰が大統領になるかで、政策の方針が変わるので、日のあたる業界とそうでない業界が出てきます。

4. 規制の動向:これは3の大統領が誰になるかにもよります。

AIなど最先端技術を扱っている会社に対して、中国ビジネスに関して、更に強い規制がかけられる可能性があり、これが、AIブームの足枷になる可能性が充分あります。これは、ワイルドカードになりそうです。

5. 地政学的リスク:ウクライナ/ロシア、イスラエル/ガザ(+ヒズボラ?)など。これらがどう展開していくのか。これもワイルドカードになりえる。

これらをどう考えるか(それぞれの要因をどの程度重視するか)によって、先行きの見方は大きく変わってくるかと思います。

一つ言えるとすれば、これまでみたいなイケイケ的な状況ではないかと思います。慎重なポートフォリオ運用が求められるかと思います。

後記

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