【米国株式週間アップデート】強い雇用統計・金利急上昇、株式市場は比較的冷静 2024年6月8日

プロ 投資

6月最初の週(6/3-6/7)のNY株式市場の最大のイベントは、6月7日(金)発表の雇用統計でした。

先週号で、インフレも落ち着きつつあるし、金利低下期待もあり、これまでの大型ハイテク中心の市場展開が変わる気配が出てきた、とお伝えしましたが、そう簡単にはいかないようです。

予想以上に強い雇用統計が発表され、金利は急騰しました。ただ、サプライズのような強い数字であったにもかかわらず、株式市場の下落が限定的であったことは、注目に値すると思います。

市場全体・マクロ:強い雇用統計は好材料?

先週期待していた(随分前から期待し続けて裏切られているのですが)、小型株(Russell2000)のキャッチアップにはまだ時間がかかりそうです。これは、利下げ開始の確率がそこそこ高くなるまでお預けかもしれません。

S&P500とNASDAQ(含むNASDAQ100)は引続き上昇中で、6/5(水)には最高値を更新しています。

雇用統計の数字は以下の通りです。(5月)

非農業部門雇用者数:+27万2千人増加(予想+18万人増加、前月16万5千人増加)

失業率:4%(予想3.9%、前月3.9%)

平均賃金(対前月比):+0.4%(予想+0.3%、前月+0.2%)

平均賃金(対前年比):+4.1%(予想+3.9%、前月4.0%)

失業率は僅かに上昇したものの、非農業部門雇用者数の伸びや平均賃金の伸びは、インフレの鎮静化にはマイナス要因と考えられます。

その意味では、市場が期待する金利の早期引き下げ期待を後退させるものです。

結果として、木曜日に比べて金利は上昇しています。(前週比では、週中に弱めの経済指標で大きく金利は低下していましたので、若干低下しています)

2年金利:4.72%→4.89%

10年金利:4.29%→4.43%

この雇用統計が発表になっても結果として6/7(金)の市場は、僅かなマイナスで終えています。

これは少し意外でした。これまでであれば、金利上昇はマイナス要因です。

メディアの報道(運用会社のストラテジスト等のコメント)を見ていると、どうも、あまり弱い数字は、これまでの高金利が景気を腰折れさせてしまい、ノー・ランディングやソフト・ランディング期待を崩してしまいかねない。

景気はそこそこ強いが、インフレは沈静化するというシナリオにまだまだ期待をかけているということのようです(ノー・ランディングもしくはソフト・ランディング)。雇用統計よりもインフレ指標の方が重要だ、というようなコメントもいくつかありました。

それはそうなんですが、結果的にどのような経済指標であれ、株式市場が下がらない、あるいは上昇する言い訳を探しているだけのようにも見えてきます。

正しいかどうかは別として、総体としての株式市場はそのように動いているようです。

来週はインフレ指標の発表に加え、FOMCもあります。早期の利下げ期待はかなり後退してしまいましたが、ドット・チャートの発表で、FOMC内の見方についてある程度予想が出来るので、注目されています。

セクターの状況:大型成長株主導はまだ続く

この週も結果として、テクノロジーなどグロース系セクターが市場を牽引しました。ヘルスケアは、薬品株が新薬の期待などで上昇したことなどで堅調でした。

弱い景気指標が出たことや、金曜日の強い雇用統計など、マクロ経済指標は転換期なので、マチマチになりやすいかと思います。その影響もあり、シクリカルはどうしても弱めに出てしまうようです。

金利低下期待が強くなると、これらのセクターはキャッチアップしてくるかと思います。

先週、セクターロテーションが起きる兆しが見えるとか言いましたが、まだ早かったようです。この状況は割安株投資などの投資家にはなかなか厳しい状況が続きそうです。

成長株投資でも、かなり偏った動きなので、しっかりとした投資哲学・アプローチを持った運用者もなかなか勝ちにくいかもしれません。

個別株の状況:NVDA、LLY、AAPL、TSLA

AIテーマの中心銘柄のエヌビディア(NVDA)は、台湾のイベントでのジェンセン・ファンCEOの強気発言や、ASMLのニュースなどで、All Time Highと引け値ベース最高値を更新しました。

一方で、ジェンセン・ファンCEOが保有株の一部を売却する申請をSECに出したことが伝わり、若干頭を抑えられる形となりました。

NVDAは、6月7日の引け時点を基準日として、株式分割(1:10。1株が10株になり、株価は1/10になります)が行われます。1株が$1000以上であったものが$100程度になるので、個人投資家にも更に買いやすいものとなるので、経済合理的には全く意味がないとしても、株価が動きやすくなるかと思われます。

ここには載っていませんが、薬品メーカーのイーライ・リリー(LLY)は、糖尿病薬・減肥満薬でかなり上昇してきましたが、アルツハイマー病新薬のFDAの審査結果が出ます。この新薬への期待も大きかったので、もし、すんなりと認可されない場合は一旦売られる可能性もあります。

好調NVDAに、時価総額世界第3位(米国2位)の座を奪われてしまったアップル(AAPL)は来週(6/10の週)に開発者向けのイベントを行います。そこで、iPhoneやiPadなどにデバイス内生成AIツールが搭載されることが発表されると期待されています。

SiriにAIが搭載されると予想されています。AAPLは4月19日の52週安値から約20%上昇しましたが、そのほとんどがこのAI対応に対する期待と考えられており、場合によっては、この発表で材料出尽くしとして、利食い売りに会う可能性も大きいかなと思っています。

最近冴えないテスラ(TSLA)ですが、株主総会が13日に行われます。イーロン・マスクCEOへ巨額報酬契約の再承認と、デラウェア州からテキサス州への最法人化などが投票されます。

この巨額報酬は、株主にとってみれば収益の希薄化要因になりますが、好きか嫌いかがはっきり出るキャラではありますが、マスク氏はカリスマ的に信奉されているとも言え、ガバナンスとして疑問のある決議ですが、可決され、株価も上昇してしまうこともあり得ます。

今後の見通しと何をすべきか?

来週のイベントとしては、全体に影響するものとして、FOMCがあります。

今回のFOMCで利下げの発表があることの期待はほぼゼロです。注目は、上でも述べました通り、FOMCメンバーが、今後の金利動向をどう見ているのかを示すドット・チャートが発表されることです。

これによって、FOMCが年内の利下げや利下げ回数について、どのように現時点で想定しているのかを推定することができますので、市場は注目しています。

FOMCは11日・12日に行われ、結果は水曜日の午後2時(NY時間)ごろ分かります。

インフレ指標であるCPIが12日(水)、PPIが13日(木)に発表になります。FOMCとも重なっているので、これらの数字が直接的にFOMCに影響することはないかと思いますが、次回以降に向けての期待感の醸成のしかたに影響してくるかと思います。

個別では、AAPLの開発者向けのイベントでのクックCEOのスピーチ(6/10(月))も注目ですし、TSLAの株主総会も話題としては気になるところです。

ネガティブな材料の中を好材料(少なくとも悪材料の程度を下げる材料)を見出す、今の市場心理は市場が基本的に強気スタンスであることを示しています。

大きく下げることなくしばらく上昇してしまう可能性もあります。

金利低下期待で円高方向に動きかけた為替ですが、雇用統計を受けて、もとの水準に戻りました。

本格的な円高シフトは、もう少し時間かかるかもしれません。

ここで述べていることは個人的見解であり、保証はできません。投資は自己責任でお願いします。

後記

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