5月12日~5月16日の米国株式市場は、週初に、米国と中国の貿易に関する協議の進展と、双方が大幅に関税を低下させる行動に出たことで、市場のセンチメントは一気に改善し、週次では今年2番目に大きく上昇した週になりました。
概要&マクロ
NASDAQはまだ若干マイナスですが、NYダウ平均、S&P500は、この週の戻りで、年初来もプラスに転じています。
大底であった4月8日の引け値から、S&P500は、19.58%上昇しましたし、NASDAQは+25.83%上昇しています。
短期間での強烈な戻りです。一般に言われている定義で言えば、ほぼ強気相場と言って良い状況です。
ただ、この動きは、逆に下落が急激であったことの反動とも言えます。センチメントは非常に強い状態になっていますので、まだ、フォロースルー的な上昇は当然あり得るのですが、現時点では過度な期待はしない方が良いと考えています。
関税が米国経済に与える影響がまだ不透明であることが大きな懸念です。米国への輸出に大きく頼っている海外企業はもちろんですが、コストを下げるために、海外に工場を移転した米国企業にも大きな影響が出ます。
結局、そのツケは価格の上昇でアメリカの国民が支払わされる、もしくは、米国企業や海外の企業が負担し、企業の収益への足枷になることで、株価や資産へのマイナスの影響の形で世界中の人が負担する、ということになりそうです。
結果的には関税は10%前後で収束すると考えていますが、それでも、これまでほぼ無かったものが、10%になるので、それなりのインパクトが出るのは否めないでしょう。
それを補って余りあるだけの成長政策が取れるかどうかが、トランプ2.0の評価になるかと思います。
この週は、経済指標も必ずしも強いものが出ている訳ではありません。
一方で財政絡みで少し大きなニュースで今後の米国の政策などにも影響があるかもしれないニュースが金曜日に出ています。
ムーディーズは米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へと1段階引き下げました。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失うこととなりました。
この理由は、政府債務(国債発行)の増加です。(日本に比べれば、全然大したことないですけどね。)
トランプ政権が、進めてきた、引き上げた関税を財源に減税を行うという方向にも、若干、陰りが見えてきています。議会で減税法案が一部共和党の議員からの賛成が取り付けられず、否決されてしまいました。
両方をパッケージで見て、その影響がどうなっていくのかを考える必要があります。
セクターの状況
綺麗に色分けできました。この週は、グロース主導のマーケットであったことがよく分かります。
そして、その次が関税問題の懸念の薄まりで、景気敏感が来ています。
市場混乱期に物色されていたディフェンシブから、グロースや景気敏感に資金が流れたという感じですね。
個別銘柄の状況
海外で作成された映画に対して関税をかけるというような話で、一旦、最高値更新が途切れたネットフリックス(NFLX)ですが、市場の強い動きに押され、All Time Highと引け値ベースの最高値を更新しています。
市場全体の強い流れの中で、エヌビディア(NVDA)やテスラ(TSLA)も関税の影響が緩和されるニュースなどもあり、大きく上昇しています。
NVDAは、トランプ大統領の中東訪問中に、アラブ首長国連邦(UAE)に対して、NVDA製の最先端半導体100万基以上の購入を容認する方向で検討しているというニュースで大きく上昇し、長く低迷していたNVDA株は再び動き始めた感じです。
上のテーブルの中で、大きく下落している銘柄が一つ目立っています。
ヘルスケアのユナイテッド・ヘルスケア(UNH)です。日本でいう健康保険を民間で提供している最大の企業です。
先月半ばに、ヘルスケアコストの想定以上の上昇で、収益が圧迫されているというニュースで大きく下落して、低迷していたところに、この週にCEOが突然の退任、そしてその二日後に、政府への保険請求において不正があった可能性で、調査(Criminal Investigation)が入っているとのニュースで立て続けに大きく下落しています。
金曜日に+6.4%上昇していますが、それでも、週間ベースで-23.3%の下落。年初来で‐44%の下落。この銘柄は、昨年11月に最高値をつけ、そこからは‐60%の下落です。NYダウにも採用されている銘柄が短期間でここまで下落することは珍しいかと思います。
今後の見通し
上の「概要」でもお話した通り、関税の懸念で大きく下落した分は回復しました。率はまだいろいろありそうですが、10%前後に落ち着くとしても、その影響が見えにくい。
その多寡は別として、それなりの影響があることは確実だと思って良いかと思っています。
その影響が、企業収益にどの程度影響してくるのか、それが最大のポイントかと思います。そしてそれが明確になるのは、まだ時間かかります。
トランプ政権が、来年の中間選挙に向けて、国民が喜びそうな政策をどの程度発表し、実現出来ていくのか。それはおそらく、夏には始まる可能性があります。(当初は秋のはじめごろと思っていましたが、少し、前倒ししました。)
少なくとも、対処可能なレベルに懸念も落ち着いてきていることもあり、やや強気くらいの感じです。銘柄を良く選別して米国株への配分を少しずつ増やしても良いかなと思っています。
(安いところを見た後なので、ここまで戻ってきてしまうと二の足を踏んでしまいます。独白)
それから、先週、「投資の神様の推薦図書」という投稿をしています。こちらも併せて読んでいただけると嬉しいです。
後記
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