概況
先週(10/23~10/27)の米国株式市場は、前週からの懸念材料に一喜一憂しながら、軟調な展開を強めていった感じでした。
まだ、しばらくこのような状況が続く可能性があります。
主要指数で言えば、S&P500が火曜日、NASDAQが月・火に上昇した以外は下落が続きました。
市場を不安定化させている要因は以下のものであることを先週指摘しました。
① 引き続き金融政策の先行きへの思惑
② 混迷を深める米国内政治(予算審議・債務上限問題、下院議長決まらない問題)
③ 危機の度合いを深める中東情勢(イスラエルvsハマス)
④ 終わりの見えないウクライナ情勢
⑤ 業績(足元と見込み=ガイダンス)
どの要因もあまり改善の方向には進んでいない状況です。
米国の下院議長は取り敢えず、マイク・ジョンソン氏が選出されましたが、意見に大きな隔たりのある(債務拡大について)共和党をまとめることが出来るのかどうかは、まだまだ不透明です。
イスラエル問題は、混迷を深める中、イスラエルの地上作戦(地上侵攻までは行かず、散発的な活動)は進んでいるようで、中東地域に拡大するリスクを高めています。
特に、市場心理を悪化させているのが、業績(足元の業績というよりは、先行きの業績の見込み)と、来週行われるFOMCでの議論の行方です。
インフレは間違いなく沈静化はしてきているものの、沈静化のスピード感が想定より遅いため、高い金利の状況が長く続く可能性に関して、市場は何らかのヒントを得たいと思っている。
個人的には、そんなことは、出来るだけ市場に分からせないようにしたいとFOMCは思っているのではないかと思っている。(分からせてしまったら、政策の効果を弱めてしまう可能性があるため)
FOMCを過ぎてしまえば、おそらく少し落ち着くかと思います。ただ、高い金利の状態が長く続くことによる景気への影響、企業業績への影響は、株式市場にはより根深い問題として影響していくると思います。
S&P500は直近の高値(7月末)から-10%以上下落しているので、標準的な定義に従っても「調整局面入り」ということになります。状況としては、既にだいぶ前に調整局面的にはなっていましたが。
シンプルなテクニカル(チャート)分析の観点から見ても、かなり前から最も弱い小型株のRussell2000だけではなく、NYダウ平均、S&P500、NASDAQも全て50日移動平均、200日移動平均を下回ってしまっています。
少なくとも200日移動平均を早期に回復しないと、長期下落トレンド入りもあり得る、ということを覚悟しておいた方が良い状況です。
あとは、反転のきっかけがどのあたりで来るか、ということになるかと思います。水準、時期のどちらの観点からも関心の高いところかと思います。
これ以上の利上げはほぼ必要はないのではないか、という点ではFRBも市場も一致している(あってももう1回、0.25%の利上げ)。後は時間の問題なので、ほとんど根拠はないが、年が変わると少し見え方は変わってくるかもしれない。
市場参加者が、FRBに甘い期待をしなくなり、かつ、調整がしばらく続くと、材料視されなくなってきます。(Wall Streetは忘れっぽいのです。)
まあ、今の状況でも、S&P500は年初来で+7.24%、NASDAQに至っては+20.8%なので、長期平均からすれば、S&P500も年間の上昇としては悪くない。NASDAQは十分すぎるくらいです。
どこまで持ちこたえられるか。
金
地政学リスクが高まっているものの、ドルは高金利に支えられて下落せず、一方で地政学的リスクの高まりを背景に金価格が上昇し、終値で1オンス2000ドルを越えて終了しました。(円安と金価格上昇が同時に起きるという珍しい現象が起きており、円ベースの金価格は最高値更新中です)
セクターの状況
金融政策の行方、特にいつ利下げに転じて中立水準に戻すのか、に市場の関心が集まっています。即ち、これ以上の金利の上昇はあまり想定していないということです。
それもあり、実は金利は前週末より少し低下しています。市場の下落と金利の若干の低下(上昇しなかった)により、ユティリティが唯一プラスリターンになっています。
個別株の状況
マグニフィセント7でも、流石に今週は市場を持ち上げることは出来ませんでした。
業績に明暗が分かれています。
業績が良かったマイクロソフト(MSFT)とアマゾン(AMZN)はこんなマーケットでもしっかりと上昇しています。
一方で、業績が今一つだったメタ(META)と失望とも言えるアルファベット(GOOGL)は下落。特にGOOGLは大きくマイナスとなっています。
明暗を分けたのは、クラウドのビジネスのようです。AMZNのAWSやGOOGLのクラウドビジネスが伸び悩んでいる中、MSFTのAzure(アジュール)は堅調に伸びています。ここでも、アプリケーションとの親和性で有利とも言えるMSFTの強さが出た感じです。
上で銘柄名にシャドウがかかっているのは、52週の安値を更新した銘柄です。ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)、アメリカン・エアライン(AAL)、ユナイテッド・エアライン(UAL)、シェブロン(CVX)。
それぞれ理由があるのですが、CVXは原油価格が中東情勢の緊迫化もあり上昇してきているのに大きく下落したのは、業績がアナリスト予想を大きく下回ったため。
その原因としては、最近活発化している買収コストの影響によるものです。同社もエクソン・モービルも、今後の開発のための油田資産を購入しています。こうした動きと脱炭素の動きをバランスさせなければならないので、様々な点でコストが高まりそうです。
何をすべきか
来週は、アップル(AAPL)の決算もあります(11/2)。ただ、AAPLの決算だけで市場が反転することはあまり期待しない方が良いと思います。
市場の反転、少なくとも下落をストップさせうるのは、FOMCの結果ですが、これにも過大な期待はかけない方が身のためだと思っています。
投資の巧拙、結果を分けるのは、このような時期の投資活動です。下手なリスクを取りに行かないことが重要です。感情に駆られて動く(恐怖に駆られて売る、欲望に駆られて買う)ことを避けられれば、結果は良くなっていきます。
投資は忍耐です。投資は確率なので、確率が生きるためには、同じことをやり続けることが大事です。積立投資を今のような時期にストップさせてしまうということは止めた方が良い。淡々と続けましょう。
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