株式投資に分散ということで、まず第一に加えるべきものとして、債券が上げられます。
金利については、前回、大まかなイメージは理解いただけたかと思います。
債券が、市場で取引され、その価格によって、金利が決定されていくという仕組みになっています。
それを理解するためには、まず、債券とは何かを理解し、そのうえで債券と金利の関係を理解していく必要があるかと思います。
債券とは何か?
債券を表す英語表現は上のようにいくつかあります。それぞれの英語の意味から、債券の特性が見えてきます。
言ってしまえば、発行体(お金を必要として、債券を発行する形で資金調達を行う主体)が、投資家(資金提供者)に対して、借金をし、その見返りとして、満期日には額面金額の支払いをし、その途中でも、定期的に決まった日に、一定率の利息を払う約束をする、証書です。
利払いの期日にその証券(債券)を保有する人に、発行体は利息(あるいはクーポンと呼びます)を支払い、満期日にはその時点での保有者に額面の返済を行います。
その債券発行時に、額面と価格が同じであった場合には、額面に対する利息の割合が金利になります。
通常は、この利息の比率(これもクーポンと呼ぶことが多い)は、発行時に決定されると固定され満期まで同じ比率になります。
これが、債券を少し複雑にする要因ともなっています。この金利と価格の関係は後述します。
まずは、債券にどんなものがあるか、その種類についてご紹介します。
この区分は、発行体による区分です。
国債:日本であれば、日本国債(Japanese Government Bond: JGBと呼ばれています)です。
アメリカでは、国債とは呼ばず、財務省証券(30年債などの長期債はTreasury Bond、10年以下のものはTreasury Note、短期債はTreasury Billと呼ばれています)
基本的に、その国の中では、国債が最も信用力が高いので、最も低い金利設定になります。そこに信用力に応じて上乗せ金利が乗ります。
国債ではないですが、国際機関(World Bankや、アジア開発銀行=ADB、などの国際機関)が発行した債券は国際機関債と呼ばれ、国債に準じた扱いとなります。
また、国債よりは若干ランク的には落ちますが、国債に準じた扱いになっているのが、政府機関債です。ただし、利払い・返済について国の保証がどの程度入っているのかによって信用力に差が多少でます。(国の機関扱いだが、利払いや償還金返済についての保証のないものもあります)
地方政府債は、日本であれば東京都が発行した債券などです。米国では、州政府が債券を発行するケースが多い。州内の投資家を優遇するため、免税債のものも沢山あります(その分、利回りが低い)。最近では、一般の債券同様に課税されるものも発行されています。
モーゲージ債(MBS)は、住宅ローン債権(返済を受ける権利)を担保とした債券です。この分野は少し難しくなるので、ご興味のある方には、このシリーズの最後でもう少し詳しくお伝えします。
資産担保証券(Asset Backed Securities:ABS)は、債権(返済を受ける権利)を担保とした債券で、MBSもABSの一部です。
ABS・MBSは証券化商品と言われているものです。
米国では、MBSの市場が財務省証券と同じくらいの規模があり、米国の債券投資では無視できない存在です。MBSやABSは、通常の債券とは異なる動き方(金利の動きへの反応の仕方が異なる)をするので、分散効果もある一方、理解するのが少し難しい世界になります。
リーマンショック(GFC:Great Finacial Crisisと世界では呼ばれています)の原因の一つとされているのが、このABSの世界の行き過ぎです。(証券化された証券を更に証券化するなど、リスクが見えにくくなっていました)
発行体区分以外の角度から、債券の種類を見てみましょう。
一般的に債券と言ったときに、イメージされているのが、固定利付債です。利率(クーポン)が満期まで一定のものです。
変動利付債というのは、利率(クーポン)が一定ではなく、市場金利の動きに合わせて変動するものです(4半期に一度見直しされるものなど)
通貨による区分は、額面・利払い・償還金がすべて円でなされるものは円建てです。日本の企業がドルの資金を調達するために米国で債券を発行するようなケースでは、日本ネームですが、額面・利払い・償還金がすべてドルでなされ、ドル建てと分類されます。
クーポン(利払い)と償還金の支払われる通貨が異なるケース、例えばクーポンはドルで、償還金は円で支払われるようなケースは、二重通貨建て(デュアルカレンシー債)と分類されます。
債券発行時に購入するようなケースは、新発債と呼ばれます。これに対して、既に発行されたものを市場で売買するようなケースでは、既発債という言い方がなされます。
格付けによる区分では、Moody’sやS&Pといった格付け会社の格付けで分類されます。Moody’sではAaa~Baaが投資適格とされており、Ba以下が非投資適格(ハイイールドとかジャンクとも言われています)と扱われます。S&PではAAA~BBBが投資適格で、BB以下が非投資適格となります。
これは信用リスクによる区分ですが、投資家層も投資適格と非投資適格で明確に異なります。金利に対する挙動も変わってきますし、非投資適格ではより支払い能力に関しての関心が高くなります。
その他に挙げた転換社債、ワラント債、仕組み債、証券化商品などはかなり専門的な内容になっていきますので、ここでは名前だけ知っていれば良いかと思います。債券の世界では、新しいタイプのものが多く開発され売られています。
債券投資のプロでない限り、債券投資に関しては、特殊なものには手を出さず、固定利付の普通の債券(ストレートボンド)と言われるものにのみ投資する、あるいは、プロの運用する投資信託で投資するのが良いかと思います。
上のスライドで取り上げていないもので、是非覚えていただいた方が良いと思われるのはTIPsと呼ばれる債券です。これは米国の財務省証券の一種で、インフレ連動債と呼ばれるものです。指標となるインフレ指標の動きに合わせて、クーポンだけでなく、額面も変動するというものです。インフレが上昇しそうなときに有効な投資先になります。
今回はここまで。次回は、債券投資で理解しておくべき用語といよいよ債券投資の基礎である、金利と価格の関係などについての解説をしていきます。
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