今回は、投資というよりもトレードについてのお話です。
ジョージ・ソロスって知っていますか?
ジョージ・ソロスがその名をとどろかせたのが90年代なので、知らない人も多いかと思います。
今では、フィランソロピスト(慈善活動家)として知られてもいます。
時々話題に出てくるジム・ロジャーズ(この人も伝説の投資家とか言われていますね)をアナリストとして雇っていた人です。
ジム・ロジャーズとは、どうもそりが合わなかったようで、袂を分かっています。
ジョージ・ソロスは、クォンタム・ファンド(元々はソロス・ファンドという名前でした)というヘッジファンドのマネジャーとして名を知られています。
ジョージ・ソロスを特に有名にしたのが、1992年のイギリスの中央銀行であるイングランド銀行との為替バトルでイングランド銀行を敗北させたというものです。
ジョージ・ソロスはこの為替の攻防戦で$1bil(10億ドル、当時の円価で約1260億円)の利益を出しています。
利益の額も凄いですが、中央銀行を打ち破ったというのも凄いですよね。
ジョージ・ソロスの大成功の秘訣は、負け方にあるのではないかと思います。
トレードは損失をどれだけ小さくするかがカギ
ジョージ・ソロスのトレードのヒット率(Hit Raio)は40~45%くらいという話を聞いたことがあります。
それに対してウィン率(Win Ratio)はかなり高い。
ヒット率というのは、そのトレードが当たったか外れたかを示すもの。
一方、ウィン率はどれだけ儲けたかを示すものです。
即ち、ジョージ・ソロスのトレードは外れたものの方が多いが、勝った時には大きく勝ったということです。
失敗したトレードでの損を如何に小さくし、勝ったトレードで如何に儲けを大きくするかということに、ジョージ・ソロスはとても長けていました。
ジョージ・ソロスは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、合理主義哲学者カール・ポパーに師事し、哲学者を目指したが、どうも哲学者としてはポパーからも認めてもらえなかったようです。
そして、ジョージ・ソロスは、哲学者になり損ねて金融業界に入った。
ジョージ・ソロスのマーケットを見る見方にジョージ・ソロスがLSEで学んだことが反映されているように思います。
そして、それにジョージ・ソロスの動物的な感性・勘と勇気・行動力が融合してヘッジファンドで大成功した。
哲学に傾倒していたこともあり、ジョージ・ソロスは儲けたお金を湯水のように使うことに興味があったという訳ではなかったようです。
ジョージ・ソロスは大金を儲けることで、他のトレーダー、投機家にはない哲学的考察・方法論を持っているからだということを証明したいという欲求が強かったようです。
哲学的思考・方法論に関しての詳細説明は省略しますが、単純に言えば、市場は効率的ではなく、バイアスがかかっており、行き過ぎによるブーム(暴騰)・バスト(暴落)が起きる。
この循環に関する再帰分析の方法論を作り上げて、投機を成功させてきた。
要素としては、潜在的なトレンド、支配的なバイアス、そして株価。
これらが相互に影響しあってマーケットの動きを作っていると見ている。
エッセンスは、今ではほぼ常識となっているような話でそんなに哲学的でもないように見えます。
当時としては珍しかったのかもしれません。
ただ、この理論そのものが、彼の偉大な成果を説明するものではなかったように思います。
そもそもヒット率が50%を下回っていたようですから。
自己批判:自分の考えにこだわらない。誤りを認めて修正する。
ジョージ・ソロスのトレードのスタイルは、いくつかのパターンがあったようですが、一つは「まず投資、調査はそのあと」というもの。
長期保有には興味なし。ざっと調べて何らかの点で儲かりそうだと考えたら、まず投資する。
それから調べる。
そのため、30分もしないうちにポジションを解消あるいは反転させることすらあったようです。
ある意味、動物的勘に頼って投資していた。
ここでもお分かりのように、ジョージ・ソロスは自分の考え・勘が間違っていることに気づけば、躊躇なくポジションを解消したり反転させたりもする。
自分は誤りを犯す存在であると理解し、自分の考えにこだわらない。
失敗をすぐに認め、自分の行動を振り返り、自分の犯したミスがどこにあったのかを突き止めようと常に努力する。
これはトレードだけではなく、趣味のテニスでもそうした姿勢で臨んでいたようです。
早期にミスを発見して、すぐに修正を加えれば、損失はかなり抑えることができます。
トレードの失敗は、損切が遅く、利食いが早すぎることがほとんどなので、このソロスの姿勢は大変参考になると思います。
即ち、ジョージ・ソロスの成功の最大の要因の一つは「自己批判」にあると言えます。
勇気:躊躇なく一気に勝負に出る
もう一つのトレードのスタイルは、ソロスがマクロ分析を行い、ジム・ロジャーズが特定の業界や企業を詳細に調べ、投資チャンスを見つけるというタイプのものです。
そうしたジムの下準備の上で、ジョージ・ソロスがタイミングを見計らってそのトレードの「引き金をひく」。
その引き金を引く鮮やかさが誰にも真似のできないようなものだったらしい。
ジョージ・ソロスのそばで働いた人は皆そう言っているようです。
これは「勇気」ともいえる。
「今だ」という時に躊躇なく一気に勝負に出る。
しかも、勝っていて、自信があるときは、利食いを考えるのではなく、更にポジションをどんどん積み増していく。
イングランド銀行との闘いの際もそのよういポジションを積み増していったようです。
損を減らすためのナンピンは禁物ですが、この勝っている時には、どんどんポジションを積み増すのには、かなりの勇気が必要かと思います。
分散はあまりせず、これだと思うトレードに大きく張る、というスタイルが多いようで、分散というものを嫌っています。
それは、あのウォーレン・バフェットと同じです。
ジョージ・ソロスの下で、後任としてクォンタム・ファンドの運用を任されたスタンレー・ドラッケンミラーが、ジョージ・ソロスのトレードでの大成功の原因となった特質として、以下のようなものを挙げています。
投資・トレードで大成功するための特質
緊張状態での冷静さ、個々の問題を峻別して考えられる能力、批判的分析的姿勢、知性、洞察力など。
そして「引き金を引く鮮やかさ」が最大の特質。
どのような状況においても平常心を失わず、冷静に判断できる。
大負けした時でも、自分の面子など気にすることもない。感情によって取引がブラされることがない。
トレードや投資において、感情が影響してしまうことは、合理的な判断を阻害するので避けるべきことです。ジョージ・ソロスはそれを極めて冷徹に貫き通していた。
ジョージ・ソロスのようなヘッジファンドの投資スタイルは、当時、「グローバル・マクロ」と言われるスタイルでした。
多くのマネジャーがいましたが、勝つときと負けるときにリターンの格差が大きく、だんだん減少していった。
その後、このグローバル・マクロは、小さなポジションを多数もって分散することでリターンを安定化させたスマート・マクロというものに変化していきました。
残念ながら、最盛期のクォンタム・ファンドと同じようなスタイルでの投機を行うヘッジファンド大きく減少してしまいました。
簡単にマネできるものではないですが、短期のトレードを行う人は、ぜひ、ジョージ・ソロスのトレードを参考にされたら良いかと思います。
学んで損のないものが沢山得られるかと思います。
ウォーレン・バフェットとジョージ・ソロスの共通点について考察した書物も出ています。
大きな結果を残す人には共通点が多いようでし、それは驚くにはあたらないことかとも思います。
誰にでも可能な長期投資
短期のトレードであればあるほど、上で上げた特質が成功の要因として大きな比重を持ちます。
しかし、普通の人には、なかなかそうした資質を全て持ち合わせた人はいません。
長期投資は、むしろ、そうした特質を全て揃えていなくても成功しうる投資法として、多くの人に知っていただきたい投資法です。
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