世界一の投資家ウォーレン・バフェットとその相棒チャーリー・マンガー(故)が過去のバークシャー・ハサウェー(バフェット氏がCEOを務める企業)の株主総会の際に、株主からの質問に応えて、推薦図書を何度も紹介しています。
今回はその中で、投資に関連するものを中心にピックアップして紹介していきたいと思います。
推薦図書の中には、その年に出版され、読んで面白かったということで紹介されているものも多数ありました。これらも、非常に興味深いものではありますが、今回は投資関連に絞っていきます。
まず、何と言ってもバフェットの師匠であるBenjamin Grahamの著書から
1. “Intelligent Investor” by Benjamin Graham (「賢明なる投資家」ベンジャミン・グラハム著)
ベンジャミン・グラハムには、有名な「証券分析」というとても厚い大部の著書があり、これもお勧めではありますが、この本は第何版を読んだかでだいぶ印象が異なってくると言われています。
バフェットは、グラハムから割安投資を学んでいます。当初はその割安に極度にこだわるあまり、シケモク投資(どうしようもないビジネスでも何らかの価値があり、その価値に比べて相当割安の値付けがされているものを買うというもの)をし、何度も痛い目にあっていました。
割安だが、その割安が割安のまま放置されれば、投資した価値はないし、買収した場合には、どうしようもないビジネスでは、買った価値もない。
その典型が現在のコングロマリットであるバークシャー・ハサウェーです。もともとは繊維会社です。彼はこの会社の立て直しに奔走し、大変苦労しました。
しかし、結局繊維業は廃業し、保険会社に変貌し、成功を収めていきます。彼は、バークシャー・ハサウェーを買収した失敗(過去最大の失敗だそうです)を忘れないために、バークシャー・ハサウェーという会社名を残しています。
バフェット氏は、この「賢明なる投資家」の中でも、特に第8章投資家と株式市場の変動、第20章投資の中心的概念「安全域」の2章の重要性を強調しています。この二つの章は必読と言っています。(1996年の株主総会)
バフェット氏は、グレアム師匠から「安全域」の考え方を引き継ぎ習得した上で、次に進みます。「ダメな会社を割安で買うより、優れた会社をまあまあの価格で買う方が良い」という考え方に移り、企業の成長性(安定成長性)をビジネスの理解の上で追求し、そのうえで、割安なタイミングを狙って買う今のスタイルが形成されていきます。
そして、投資をする上で本当に重要な考え方は3つだけであり、その3つはこの本に書かれているとしています。
① 投資は、価格がモゾモゾと動く何かを買うことではなく、ビジネスを所有することだと考える。
② 市場と向き合う態度:投資家の最大の関心は、適切な証券を適切な価格で取得して保有すること。(投機家は、価格の変動を予測して利益を得ることに関心)
③ 「安全域」を確保すること
この三つをどのように達成していくのかが方法論になっていきます。
そのうえで重要なのが、次に紹介するフィリップ・フィッシャーの考え方で、バフェットの第二の師匠です。
2. “Common Stocks and Uncommon Profits” by Philip Fisher(「株式投資で普通でない利益を得る」フィリップ・フィッシャー著)
3. “Paths to Wealth Through Common Stocks” by Philip Fisher (「株式投資が富への道を導く」)
バフェットは、この二つの本を非常に良い本として進めています。この本を勧めた時(1996年の株主総会)に、合わせて紹介したのが次の本です。
4. “The Money Masters” by John Train (「ファンド・マネジャー」ジョン・トレイン著)
このジョン・トレインの作品は著名投資家の投資スタイルをまとめたものです。9人の著名投資家が取り上げられており、その最初がバフェット氏です。
また、この本は同じ形で“The New Money Masters”(「新ファンドマネジャー」)、“Money Masters of Our Time”(「マネーマスターズ列伝」)と続編も出ています。
このジョン・トレインのシリーズ本3冊を読んでよく分かるのが、著名・偉大な投資家は、投資哲学がしっかりしており、それを愚直に規律正しく堅持して市場と向き合っています。
プロの世界では、この投資の規律のある(”Disciplined”である)投資家であることが非常に敬意をもって評価されています。
5. “The Essays of Warren Buffett” by Lawrence A. Cunningham(「バフェットからの手紙」ローレンス・カニンガム著)
自ら投資に関する本を著していないバフェットが、この本のみが自分の考え方を一番忠実に語っている、として評価しています。
それは、当たり前と言えば当たり前です。そもそも、この本は、バフェットが毎年年度の決算報告書とともに発表する株主向けのレター(これは非常に興味深く面白い)をテーマごとに編集し直したものだからです。
即ち、バフェット自身が書いたものを、テーマ別に編集したものなので、実質的にはバフェットが書いたものを読める唯一のものと言えます。
この本は、数年ごとに新しいものを加えて(バフェットが毎年、株主向けのレターを書いているので、毎年本に書かれていないものが世に出てくる)、新版が数年ごとに出て来ます。現在の最新は第8版ではないかと思います。
次は、バフェットではなく、彼の相棒でありバークシャーの副会長を務めていた故チャーリー・マンガー氏が勧めたものですが、バフェットの投資に関するものです。
6. “The Warren Buffett Portfolio” by Robert G. Hagstrom (「バフェットのポートフォリオ」ロバート・G・ハグストローム著)
チャーリーは、この本が著者から送られてきて読んでみたところ、非常によく書けており、是非皆さん読むべきだ、と言っていました。
この本には、”The Warren Buffett Way“(「株で富を築く バフェットの法則」ロバート・G・ハグストローム著)という前作があり、この本もバフェットの投資法に関して書かれた本の中では、最も良く書かれた本として評価されています。
まとめて4冊行きます。(2015年の株主総会)
7. “The Wealth of Nations” by Adam Smith (「国富論」アダム・スミス著)
8. “The General Theory” by John Maynard Keynes (「雇用、利子および貨幣の一般理論」ジョン・メイナード・ケインズ著)
9. “On the Principles of Political Economy, and Taxation” by David Ricardo (「経済学および課税の原理」デイビッド・リカード著) (新本では入手が難しいようです。Kindleなら入手可能)
10. “Where Are the Customers‘ Yachts?” by Fred Schwed Jr. (「投資家のヨットはどこにある?」フレッド・シュエッド・ジュニア著)
アダム・スミスの「国富論」、ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」、リカードの「経済学および課税の原理」を合わせて読めば、知性と見識が得られるだろう、と推奨しています。
また、「投資家のヨットはどこにある?」は副題にもあるようにプロに騙されないための知恵が得られるだろうとのことで、推奨しています。
バフェットによる投資に関する推薦図書は以上といったところです。なかなか手ごわそうな内容のものが多いのが印象です。とはいえ、投資の神様が推薦する本は、投資をある程度、真剣にやろうとしている人は読んでおいた方が良いかなと。
そして、世にあまた存在する有象無象のどうでも良いような投資本を切り捨てる目利きが出来るようになると、時間のムダが減り、効率も良くなると考えています。
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