何に投資するのか、どのように投資するのか、ということを考える前に、避けては通れない大事なことを今回はお話していきます。
投資リスクについて
投資信託などの広告を見ていると、その投資信託に関わる投資リスクについての説明が書かれています。
価格変動リスク、流動性リスク、信用リスク、為替変動リスクなどが主なものとして説明がなされているのではないかと思います。
「リスク」という言葉で、皆さんが想定しているのは、「損すること」(投資したものの価値が投入した資金以下になってしまうこと)と理解されているかと思います。
金融の世界における「リスク」は、その理解では一面しかとらえていないことになります。
これは、現代投資理論によって定義されているもので、現実の世界と若干乖離しています。
基本的には、リターン(資産運用を行うことで得られる収益)の出方のばらつきが大きいことをリスクが大きいといい(即ち、大きく上昇したり、大きく下落したりするのがリスクが大きいこと)、そのばらつきが小さいことを、リスクが小さいと言います。
リターンの出方の確実性が高いもの(予想が確実性が高い)をリスクが低いといい、リスクの出方のばらつきが大きく予想しにくい(不確実性が高い)ものをリスクが大きいと言います。
上の二つの図で示されているような状況です。
リスクとリターンの関係
確率・統計論的に言えば、リターンの数字とその確率を示した分布を示した場合(0を平均のリターンとしています)そこから右側はプラスのリターン、左側がマイナスのリターン。
縦軸がそのリターンの出る頻度、もしくは確率ということになります。
したがって、リスクが小さいというのは、ばらつきが小さいということなので、以下のような形になります。
一方、リスクが大きい、ばらつきが大きいというのは次のような形になります。
山がだいぶ緩やかです。
どの値もそこそこの確率で出現するということです。
大きなプラスのリターンも、大きなマイナスのリターンも出る確率が一定程度あるということです。
この正規分布によるリスクとリターンの関係は、知っていると便利ですが、知らなくても全く困ることはありません。
リスクとリターンの関係では、「ハイリスク・ハイリターン」とか「ローリスク・ローリターン」という言葉をよく聞かれるかと思います。
高いリターンを得るには高いリスクのものに投資する必要がある、というように理解している人がいます。
それは一面正しいが、常に正しい訳ではないので、お気をつけください。
高いリターンを得られる可能性はありますが、同様に大きなマイナスのリターンの可能性も同じように高いということです。
では、例えば、リスクが高いとされる資産クラス(例えば、新興国株式とか、ジャンク債など)が、4年連続でマイナスだった時、その資産クラスに投資することは高いリターンが期待されるでしょうか?
Yesと答えた方、カジノへ行ってはいけません。
それは、ルーレットで、5回連続で赤が出た後に、次は黒に違いないと思って黒に賭けるようなものです。
1回1回の事象は完全に独立(前の事象の影響を受けない)なので、どちらになるかの確率には影響はありません。
実際、過去には、モンテカルロのカジノで1913年に27回連続で黒が出たことがあります。
(公式記録。非公式には51回黒というものや、38回赤というものもあるようです。)
投資タイミング
今後の経済・市場状況がその資産クラス(株・債券・不動産・金など)にとって良い市場環境になると予想されるのかどうか、そして、それが市場参加者の見方と一致しているのかどうか、というような様々なことを考えた上で投資するかどうかを決める必要があります。
長期投資の場合は、投資タイミングの影響は時間が経てば次第に捨象されますので、投資し続ければ、大きな問題はありません。
ハイリスク・ハイリターンというのは、長期的に観察した上で、統計的に得られた結果に過ぎません。
タイミングによっては、小さなリスクで高いリターンが想定できるときや、リスクが大きいのに、低いリターンしか想定できない時もあります。
理想は、下落の可能性に比べて大きな上昇の可能性が期待できるリスクとリターンの比率が歪んでいるタイミングで投資することです。
それが簡単に見つかれば苦労はしません。
また、そういうタイミングは、マーケットの暴落時に出現することが多いのです。
まだまだ下がるようにしか見えないような時に、買うことが正しいと確信できる分析と勇気は、「言うは易く行うは難し」の典型のようなケースです。
無理はしない方が良いかと思います。
ギャンブルではないので。
リスクとリターンの関係が、リスクというのはリターンのばらつきの大きさのことであるということを理解していただいたという前提で話を進めます。
リターンのブレについて
リターンのブレが大きいのと小さいのはどちらが良いでしょうか?
答えは、「人によって、状況によって異なる」です。
多少利回りが落ちても安定的に運用したい場合には、低リスクのものが増えるでしょうし、高い変動は我慢するが長期的に高いリターンを望む場合には高リスクのものが大きくなるでしょう。
また、以前にお話をした分散の話も、リターンの出方の違うものを組み合わせることで、全体としてのリスクを抑制した上で、出来るだけ高い利回りを追及するという目的で行われています。
このリスクとリターンの関係について、適正な感覚を持てるようになると、投資詐欺に引っかかる可能性は小さくなっていきます。
リスクとリターンのバランス(ダウンサイドとアップサイド、メリットとデメリットでも可)を意識して物事を判断するとアンバランスを発見しやすくなります。
そのアンバランスが、チャンスなのか、あるいは詐欺なのか、を判断するにはもう少し知識が必要にはなります。
その話もいずれお話していきます。
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