株式投資では、テクニカル分析あるいはチャート分析(以後まとめてチャート分析とします)と呼ばれるものを中心、取引をされている市場参加者が多く存在します。
そして、マクロ経済状況、企業のビジネスの状況などのファンダメンタルズ分析行って投資する市場参加者も多数います。
チャート分析は、効くと主張する人たち、そして効かないと主張する人たち、双方いて結論は出ていません。
アカデミックの世界では、ほぼ効かないと否定されています。
では、なぜ効き、なぜ効かないのでしょうか?その点について、考えてみたいと思います。
チャート分析による投資の背後にある考え方
チャート分析の背後にある考え方、チャート分析による投資の背後にある考え方はどのようなものでしょうか。
チャート分析を信じる人には、3つの根拠・思想的背景(少し大げさですが)があります。
- チャート(株価の動き)は、全ての情報を織り込んでいる
- 価格の動きは、サイクル・トレンドを形成する
- 歴史は繰り返す
これらがチャート分析の思想的背景になります。
1.チャートは、全ての情報を織り込んでいる。
全ての情報、例えば当該企業のビジネスの状況、マクロ環境、政治環境、市場のセンチメントなど、およそ株価に影響を与える情報が全て織り込まれたものが、最終的に株価になります。
そして、その情報の解釈の変化とともに株価が動きます。
一つ一つの要因を分析し、その株価への影響度合いを考えて投資するのは非常に難しい。
であれば、結果として全てを織り込んだ株価を分析することにより、その株価変動の諸々の要因を捨象してしまうことができ、分析の方法が簡略できます。
それがチャート分析と言えます。
したがって、純粋なチャーティストは、株価を動かすファンダメンタルズの要因には全く関心がなく、株価の動きのみが関心の対象になります。
通常は、チャート分析をしている人も、その株価の動きの要因確認のような形でファンダメンタルズも見ているということが多いようです(判断材料にはしていないにしても)。
以前在籍していた会社で、非常に運用成績の良いチャーティストの運用者がいました。
彼は、「株価は全ての情報を消化した結果なので、株価の動きを分析するチャート分析は、究極のファンダメンタルズ投資だ」と言っていました。
彼の運用は素晴らしいものでしたが、ある日突然成績が急降下し、なかなか回復できず苦境に陥ってしまいました。
なぜそのようなことになってしまうのか、その点についての考察は後述します。
2.株価格の動きはサイクル・トレンドを形成する
そもそも、サイクルやトレンドが形成されなければ、チャート分析そのものが意味をなさないものになってしまいます。
これは、一つの前提になってしまいますね。
これを否定しては、そもそもチャート分析をする意味はなくなってしまいます。
サイクルは、比較的短期で上昇過程、下落過程を繰り返すようなものです。
そして、トレンドは中長期で一定の方向性を示すものです。このトレンドも超長期で見ればサイクルの一部と言えなくもない。
別の言い方では、サイクルは景気変動によるもので、トレンドは構造的な変化によるものという説明がなされることがあります。
時間軸で言えば、サイクルが比較的短いのに比べ、トレンドの方が長期かつ大きな動きと言えるかと思います。
上下動のサイクルを繰り返しながら、長期的に上昇している、というパターンも多く見られます。
サイクルやトレンドが見られるのは、歴史は繰り返すが説明になると思いますが、理由はともあれ、これまでそうであったので、今後もそうに違いないと信じるかどうかだと思います。
それを信じられないのであれば、チャート分析には向かないと思います。
3.「歴史は繰り返す」
これは、結局のところ人間の本質は変わらないということです。
過去から学んでいるようでいて、実はたいして学んでいないということです。
個々の人間のレベルでは、もちろん過去に学んで失敗をせず。
上手くやる人もいるでしょう。
しかし、市場参加者の総体としては、そうでもない、ということです。
市場の強気・弱気のパターンなども強気が過度に行けば、下落しやすくなるし、弱気が過度になると反転しやすくなる。
また、前回の高値付近では、高値買いをしてしまった人が沢山いるので、その近辺まで上昇してくると、ヤレヤレ売りが出やすい。
従って、そこを上に抜けるだけの上昇の力があるときは、その後大きな上昇トレンドに入りやすい。
新高値をつけたら買い、という相場格言はそこから来ています。
チャート分析が効くのは、まさに総体としての人間は過ちを繰り返す、ということに依拠しています。
とはいえ、さまざまな出来事により全く同じパターンを踏む訳ではない。
マーク・トウェインが言ったように「歴史は全く同じに繰り返す訳ではないが、必ず韻を踏む」のです。
(「韻を踏む」というのは、似たようなことが起きる、ということを示しています)
また、チャート分析を信じる人がそこそこの数いるということが、チャート分析が効くことの要因の一つにもなっています。
チャート分析を信じている人が同じようなポイントで同じような行動を取ると、結果として、想定通りのことが起きたりします。
即ち自己達成予言のような形になっている訳です。
全員が信じてしまうと、人の裏をかくことが出来なくなり、チャート分析は効かなくなります。
チャート分析が効くのは、人間の本質は変わらず、歴史は繰り返す、という特性があることと、そこそこの人が信じ、そこそこの人が信じていないことによって、そこそこ効くようになっていす。
この「そこそこ」のバランスが大事なのです。
パターンの認識
その一方で、先ほども言ったように、政治的なイベントや経済的なイベントなども含め、様々な要因は株価に影響することから、完全に同じことが起きる訳ではない。
おおよそ似たパターンになるというのが普通。
過去のパターンを大きく変えるような変化があった場合は、過去のチャートを見ても全く役に立たないということも起き得ます。
基本はパターンの認識なので、そのパターンの認識の仕方に技=アートの余地が入ることもチャート分析の効く・効かないを決める要因になっています。
いずれにしても、常に効き続ける分析方法はないので、勝率を高めていくために様々な工夫が必要になります。
ファンダメンタルズ分析で投資する人も、チャートを取引きタイミングを計る要素の一つとして見ておいたほうが良いと思います。
完璧な投資手法は存在しないので、さまざまなものを組み合わせて自分にとって一番使いやすく、勝率が高くなる方法を探るのが大事だと思います。
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