【米国株式週間アップデート】 パウエル・ピボットで上昇  2024年8月24日

投資

注目されていたパウエル議長のジャクソン・ホールでの講演が想定以上にハト派的なものであったため、市場は一気に利下げモードに入ってきています。

その結果、8月19日~23日の米国株式市場は上昇、S&P500は最高値に最接近しています。

同時に、円高も加速してきています。円からの米株投資ということでは、株上昇はプラスですが、円高はマイナス。悩ましい状況はしばらく続くかと思います。

 

市場全般&マクロ:パウエル・ピボット

前の週末の時点(即ち前回のアップデートの際)には既に、市場はほぼ8月初の大きな下落を取り戻していました。

この週に入ってからは、木曜日まで一進一退で、前週末比でほぼフラット。

今週の最大のイベントは、パウエルFRB議長が、ジャクソン・ホール(ワイオミング州北西部に位置する景勝地・観光地)で行われるカンザス・シティ連銀主催の経済政策フォーラムで行う基調講演でした。

この経済フォーラムは毎年このジャクソン・ホールで行われ、FRB議長が基調講演を行うことになっています。中央銀行の方向性が転換点にある時などは、この講演でFRB議長が市場になんらかのヒントを与えてくれるのではないかと期待することが多い。

7月のFOMC後の会見でも利下げの方向性は示していましたが、慎重な言い方でした。市場は、9月のFOMCから利下げします、とはっきり言って欲しい、という期待感を持ってこのイベントを迎えました。(私はこのイベントはFOMCではないので、明確な政策に関するコメントについて過度な期待をすべきではないと思っていました)

そして、昨日、米国東部時間の午前10時過ぎにパウエル議長の基調講演が行われ、この内容が想定以上に市場の期待を満たしてくれるものでした。

・インフレ率は大幅に低下した

・労働市場はもはや過熱化していない

・供給制約は正常化した

その結果、インフレはFRBの2%目標に向かった持続可能な軌道に乗っているとし、「政策を調整する時が来た」と述べまし。

これで9月の利下げを市場は確信したかと思います。

それどころか、市場では年内100bps(bpsは0.01%なので、100bps=1%)の利下げを織り込んできています。即ち、年内のFOMCは3回ですから、50bps(0.5%)の利下げが1回入る、という予想です。

上の状況が揃ったので、金融引締めから中立化に向けての利下げの転換の時期が来た、ということなので、上の条件が覆るようなマクロ経済データが出たら、利下げのスピードも変わってくる可能性は大です。

従って、特に今後もインフレ関連指標と雇用関連指標には敏感に反応する市場が続くかと思います。

今回のイベント(パウエル議長がハト派的なことを言ったこと)については、「パウエル・プット」(パウエル議長が市場を一押ししてくれた)とか「パウエル・ピボット」(パウエル議長の政策転換)といった言い方がされています。

セクターの動き

長期も短期も金利が低下しているので(特に短期金利)、その影響をポジティブに受けやすいREITセクターが好調でした。

市場の急回復時はテクノロジー・コミュニケーション・一般消費財サービスなどのグロースセクターが牽引しましたが、今週はむしろディフェンシブやシクリカルが相対的に強かった印象です。

半導体セクターが戻り切れていなのは、AIテーマがまだ続くのかどうかの不安がまだ残っていることの現れではないかと思っています。これもいずれはっきりするでしょう。

原油価格が低迷していることもあり、エネルギーセクターのみマイナスでした。

原油価格の下落は、夏の需要拡大期が終わり在庫も積み上がっていることや、最大の消費国である中国の景気が伸び悩んでいること、そして中東情勢が解決に向けて多少進展を見せていること(少なくとも悪化していない)などが背景にあるようです。

一方で、金利の低下を要因にドルが低下したことなどから金が買われ、再び最高値に接近してきています。金利が低下し、ドルが弱くなると金が買われやすい状況になります。

個別銘柄

この週にAll Time Highと引け値ベースの最高値を更新したのは、銀行株のJ.P.モルガン・チェースです。金利低下が追い風になったと言えるでしょう。

上昇率で大きく目立ったのが、Zoom Video Communications(ZM)です。皆さんがオンライン・ミーティングなどで使われているZoomの会社です。

コロナに入った時期に次世代のコミュニケーションツールとしてもてはやされ、しかも、当時のミーム株的な形で買い上げられ、最高値は600ドル近くまで行ったかと思います。それが、最安値55ドル台まで下落していました。

収益の状況は安定してきているようですし、PERが11倍で、その収益性から考えてかなり安いと思っていました。

予想を越える業績の発表で22日・23日と暴騰し、週間ベースで+20.79%でした。

自社株買いなども行っており、流石にもう反転するのか、注目されてきているようです。これだ家上昇してもまだPERは低いです。あとはAI対応次第かなと。

今後の見通し:少し霧が晴れた

今年、ここまで市場が上昇してきた要因は、FRBの利下げ期待とAIブームにあるかと思います。

FRBの利下げ期待については、方向性とタイミングはほぼ見えてきています。あとはどの程度、どのくらいのスピードで利下げをしていくのかが関心事。

この点に関する目先のイベントは、パウエル・ピボットで取り敢えずこなしました。

AIブームのテーマに関しては、28日(水)の引け後にこのテーマの中心企業であるエヌビディア(NVDA)の業績発表が行われます。

期待通りでは、一旦利食い、期待を大きく超えたら、最高値を越えて再上昇軌道に戻るかもしれません。

AIテーマのど真ん中でNVDAが注目されたのが昨年ですから、ビジネスとして好調であっても伸び率としてはどうしても厳しくなっていきます。

今回はまだ売上高としても+112%の伸びが予想されていますが、次回発表(11月)から前年比較がかなり厳しくなると言われています。(これは当然予想されていることなので、驚く話ではない)

NVDAの決算は、市場全体の動向にも影響を与える可能性があるので、注目です。

早く、AIを使って収益を上げるビジネスが登場してこないと、NVDAだけでは、AIテーマはいつまでも続かない。AIの可能性は、一般に考えているより大きっく、その影響も大きい可能性もあります。そして、進化のスピードはインターネット以上に速いと思った方が良いかなと思っています。

後記

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