しつこいインフレとその対策としての金融引締めなどの影響で、2022年は2008年の金融危機以来の大きな下落に見舞われた年となり、引き続き不安定な状況は続いています。
株価が上昇して、利益を出すというのが、株式投資での基本です。
特にアメリカ株の場合は、これまでもなんだかんだ言って、長期的には上昇しているし、今後も長期では上昇し続けると信じられています。
長期的には上昇すると信じていても、市場全体の大きな下落時には、つらいものがあります。
長期投資では、分散投資によって保有する資産全体の下落を緩和するという方法で対処します。
下落を緩和するというだけではなく、そういった時に利益を生み出す投資があるといいなと思いますよね。
実は、そんな方法も存在します。
インデックスの空売り
長期保有の株式のポジションはそのままにして、短期の下落を利用して収益を上げる方法として、インデックスの空売りを行う方法があります。
やり方としては、インデックス先物の売り、インデックスオプション(プットの買い、コールの売り)などがありますが、これらはプロの世界で一般的な方法で、豊富な資金量が必要になります。
個人投資家であれば、ベア型のインデックス連動のETFなどを使うという方法があります。
ETFでは、指標となるインデックスが下落した際に、そのETFの基準価格が上昇するベア型というものを買うことになります。
レバレッジをかけているものもあり、その場合、例えば、例えば「ベア3倍型」とか名前についています。
レバレッジが掛かっているのは、3倍型であれば、インデックスの動きの3倍の動きをするように、設計されているということになります。
利益の出方も損失の出方も、3倍であることに気を付けてください。
このベア型のETFを使って一時的な市場の下落からポートフォリオを守る(これをヘッジと言います)ために行うものは、一種の保険的な役割を持っていると考えて良いかと思います。
より積極的に、個別株で何らかの理由で下落が予想されるときに、空売りをして利益を上げようとする戦略もあります。
この戦略では、長期投資というよりは、短期的なトレーディングを主体にして資金の運用をしているケースで取り入れられることが多い戦略です。
空売りをした場合の、株価の動きと損得の状況を考えると、利益の大きさは有限(株価はゼロより下がらないので、最大値で売った時の株価分の損失)に対して、損失は無限大です。
しかも空売りは持っていないものを売るので、手仕舞うのに必ず買い戻しをしなければならず、ポートフォリオに塩漬けということが出来ません。
そうしたこともあり、それなりの知識と経験が必要であることと、どうしても見方が近視眼的になりやすいことから、個人の方にはあまりお勧めしていません。
しかし、どうしてもおやりになりたい方もいらっしゃるでしょうし、下落する銘柄を見つけるのに長けた人もいらっしゃいますので、一つのトレードの方法として、知っておくことは、利益になると思っています。
米国株の空売りについて
日系の証券会社(ネット証券も含め)では、私の知る限り、アメリカ株の空売りが出来る会社はないようです。
しかし、一部の外資系ネット証券には、CFD(差金取引)という形で米国株の空売りが出来る会社もあります。
利益の大きさは有限で、損失は無限大になりうるという、一見損得が見合わないように見える取引がなぜ行われるのでしょうか?
それは、株価の動き方の特徴にあるように思います。
上昇には時間がかかるが、下落は一瞬にして起きることが多い。
すなわち、うまく下落銘柄を見つけられれば、短期間に大きな収益を上げることができるからです。
規律のあるトレードをする
そうしたギャンブル性の高い空売りですから、規律のあるトレードをする必要があります。
注意点について考えてみましょう。
1.相場の天井を狙って空売りをしない
これをやろうとすると、市場が強い上昇している時に空売りをすることになります。
いくら、割高であると言っても、この時点で必ず落ちるという法則はありません。
割高であるものが、ずっと割高で取引され続けることは、ざらにあります。
割高で、いずれ下がるであろうことを予想することは、比較的容易です。
難しいのが、いつ下落するのかを予想することです。
割高だから売られるだろうと予想は出来ても、どこまで割高が進んだら必ず売られるというポイントは有りません。
時と場合によります。
空売りして、期限までに下がらず、追証の差出や、損切を強いられるケースもままあります。
トレンドが見え始めたら行動する。
トレンドを自分で作ろうとしない。
下がり始めてから売るということで構わないと思います。
よくある目安として、ヘッド・アンド・ショルダーのチャートパターンを形成しそうなときに、最後の方を下り始めたあたりで、空売りのポジションを作るのが、比較的入りやすい形かと思います。
2.あまりにも明らかに下落した後に空売りするのは避ける
既に5~10%あるいはそれ以上下落してから空売りするのは、やめましょう。
ある程度下落したことが確認されると、割安になったことを確認して機関投資家が買いに入ってきてしまうことがあります。
3.空売りのポジションをタイミングを長く待ち過ぎない。
2のケースと同じで、あまりに長く下げ続けている株は、割安株投資スタイルの機関投資家の買いが入りやすくなっているので、空売りに入るのは危険。
4.日次の出来高の少なすぎる株で空売りするのは避ける。
出来れば、一日の平均の取引き高が70万株以上の銘柄にする。
取引高の少ない銘柄は、少数の比較的大きな買い手の出現で流れが変わりやすい。
5.あまり欲張らないこと。
急落があったケースでも一時的なことが多い。
目安としては20%程度の利益が出たら、一旦空売りを閉じて利益を確定した方が良い。
その時点から更に空売りをして、利益の出るケースも無くはないが、上昇してしまう可能性も出やすくなり、リスクにリターンが見合わないことが多い。
最低でも2~3割は下落する可能性があるものを狙う。バリューエションから言って、どう見ても高すぎると思われる株を見つけたら、すぐに空売りをするのではなく、しばらくチャートを見て、価格と市場参加者の動きをよく観察する。
それはチャートパターンに現れます。
「鯛焼きの頭と尻尾はくれてやれ」です。
あんこの詰まった美味しいところを食べることができれば十分だと思います。
もうこれで十分という「足るを知る」ことが出来れば、投資の達人の域に達してきています。
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