3ヶ月に1度、SECのホームページにForm 13FというUS$100mil(現在の為替で約106億円)以上の運用会社の米国株投資銘柄が掲載されます。
世界一の投資家ウォーレン・バフェットの米国株ポートフォリオも3ヶ月に一度ここに掲載され、その変化がニュースになったりもします。
発表されるのは、バークシャーのポートフォリオの保有株です。
すなわち、ウォーレン・バフェット自身が買った株だけではないです。
バークシャーのポートフォリオとは
現在、高齢のウォーレン・バフェットの後継者の候補となっている二人、 トッド・コムやテッド・ウェスクラーも運用に加わっており、それぞれ独立して運用が行われているとのこと。
したがって、当然のことながらウォーレン・バフェット買わない銘柄も、バークシャーのポートフォリオには入ってきます。
現在の最大保有のアップルは、おそらく最初はテッドもしくはトッドの推薦で、その後にウォーレン・バフェット気に入って保有を増やしていったのではないかと推測しています。
最近、話題になった例では、半導体製造メーカーの台湾セミコンダクターの購入です。
初めてリストに登場して最初から上位9番目です。テクノロジーの中では、その仕組みとか細かいところを抜きにすれば、比較的分かり易いストーリーかと思います。
本当に良いところに目を付けて、良いタイミングで購入したと思います。
脱帽です。
最近発表されたリストは以下の通りです。(2022年9月30日現在)
発表された保有銘柄のトップ10は、以下の通りです。
- アップル(AAPL、39.5%)
- バンク・オブ・アメリカ(BAC、10.0%)
- シェブロン(CVX、8.7%)
- コカ・コーラ(KO、7.6%)
- アメリカン・エクスプレス(AXP、8.99%)
- クラフト・ハインツ(KHC、3.9%)
- オキシデンタル・ペトロリアム(OXY、3.7%)
- ムーディーズ(MCO、2.2%)
- 台湾セミコンダクター(TSM、1.4%)
- アクティブ・ビジョン(ATVI、1.4%)
トップ5までの比率に比べると、6位以下の比率がかなり小さくなります。
トップ5で全体の73%近くを占めています。かなりの集中投資です。
その中で、やはり群を抜いて保有比率の大きいアップルがとても目立ちます。
割安株の権化と言われたウォーレン・バフェットにしては、ちょっと異色の保有です。
しかも、彼のポートフォリオの全体の約4割です。
なぜ割安株投資をやめたのか
実は、彼はアップルが割安でないことを認めた上で、大量に買っています。
では、彼は割安株投資を止めたのでしょうか?
彼の投資法の中に割安株投資は重要な位置づけではありますが、実はそれは手法の一部であってそれがメインではないです。
そのあたりを理解しておく必要があります
ご存知のように、ウォーレン・バフェットの師匠は、ベンジャミン・グレアムです。
バリュー投資の神様のような人です。
その教えを受けて、ウォーレン・バフェットも当初はともかく安い株を買うという投資をしていた時期があります。
斜陽産業の中の安い株を買って、少し上がったら売るようなこともしていました。
彼はそれをシケモク投資と呼んでいます。
こうした運用で得られるものは、小さいのです。
それにウォーレン・バフェットも気付き、投資手法をシフトさせていきます。
そこに大きな影響を与えたのがフィリップ・A・フィッシャーです。
「普通株で普通でない利益を得る」(Common Stocks and Uncommon Profits)の著者です。
フィッシャーはむしろ成長性を重視した投資法です。
そこからウォーレン・バフェットの投資法は、成長性重視と集中投資を学びます。
そして更に、ウォーレン・バフェットの有名な相棒であるチャーリー・マンガーから良質の企業を買うという投資法を学び、現在のような投資手法を作り上げてきています。
今では、どちらかというと成長性のある質の高い良いビジネスの方に軸足があると言って良いでしょう。
成長性のある質の高いビジネスであることが、まず重要な必要条件であり、割安であることは、最終段階での判定するための十分条件に過ぎません。
だからアップルも買うのです。
成長性のある質の高い良いビジネスに投資する
成長性のある質の高い良いビジネスであるものとはどういうものでしょうか?
成長が容易に見通しやすいということが、ウォーレン・バフェットにとっては非常に重要なことです。
これが、彼が言う「理解できる(知っている)ビジネスを買う」ということです。
彼は、1日中朝から晩まで企業の年次報告書を読むのが楽しくて仕方なく、そして企業の中身を徹底的に知ることを楽しんでいます。
ほぼ経営者なみに、そのビジネスや会社のことを知っているというレベルです。
そして、経営者の目線で、長期的に収益が増加していきそうな企業を選びます。
株価は予想していません。
この投資で有名な例では、コカ・コーラ。
これは、非常にシンプルなビジネスだが、収益性が高い上に、世界中で飲まれており、成長性も安定的に高い。
アップルに関して言えば、アップルのファンはアップル製品を買い続ける熱烈な信者が多い。
iPhoneユーザーは大体においてずっとiPhoneユーザーです。
コーク信者は、コークしか飲まず、ペプシは飲まないのと同じように。
安定した収益成長が見えるというのが最大のポイントだったのでしょう。
もちろんこれだけではなく、大量のキャッシュを保有していることや、その他の様々な基準をクリアして購入に至ったのですが、単純化するとこんなところです。
彼が大好きなビジネスは、渡らざるを得ない橋の上で橋の通行料金を徴収するようなビジネスです。
所謂プラットフォーム型ビジネスです。
特にそれが消費者関連で行われているものが好きなようです。
台湾セミコンダクターを大量購入したのも、半導体があらゆるところに使われるようになり、その需要は増えることはあれ、減ることはないだろうと言われています。
一方で、どのような半導体が最も伸びるのかは技術革新次第。
台湾セミコンダクターが行っているのは、そうした半導体のデザイン・設計ではなく、製造の方です。
製造の世界では世界で圧倒的なシェアを持っています。(2022年には世界の半導体製造の66%のシェアを占めると予想されています)
ビジネスが伸びることはほぼ保障されたも同然の状況で、しかも米国、欧州、日本も経済安全保障の観点から、台湾セミコンダクターを優遇措置付きで誘致して工場を自国に作ってもらおうとしている状況です。
にもかかわらず、需要の短期的な落ち込みや、金利上昇の影響で半導体セクター全体が売られたのにつられて売られていました。
このタイミングでこの台湾セミコンダクターを買ったウォーレン・バフェットには、流石と言うしかありませんでした。
優れた企業を割安で買うのが理想ですが、優れた企業が割安になることは少ないです。
そのような状況では、「平凡な企業を割安で買うよりは、優れた企業をまあまあの株価で買う方が良い」とウォーレン・バフェット自身も言っています。
割安であることが、株式購入の理由ではありません。
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