投資と富の賢者、世界一の投資家とそのパートナーであるウォーレン・バフェットの知恵に学ぶシリーズの2回目です。
ベースとなっているのは、CNBCの行ったウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーへの独占インタビューです。
前回、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの出会いと初期のころの失敗の話が中心でした。
バークシャーの本社は非中央集権的・自治的な組織
世界で第8位の時価総額を誇る大企業で傘下には60もの企業を持っているコングロマリットですが、バークシャーの本社はネブラスカ州オマハのオフィスビルの2フロアで、25人で運営されています。
世界でこれほど非中央集権的・自治的な組織はないと言われています。
これがなぜ可能なのか?
その背景にはやはりウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーのパートナーシップと、更にそのコアには中西部の文化(Midwestern Values)が深く関与しているように思えます。
アメリカを理解するには、中西部のカルチャーを知る必要がある
「中西部の文化」と言ってもピンと来ないかと思いますので、簡単に解説しておきます。
アメリカと言った時に多くの日本人が持つイメージとしては、ニューヨークとかロスアンジェルスと言った海岸線の地域の大都市であることが多いかと思います。
しかし、実際には、この地域はアメリカでは人口こそ多いものの、アメリカの一部でしかありません。
NYやLAは外国みたいなもの、というアメリカ人すらいます。
アメリカを理解するには、中西部のカルチャーを知る必要がありそうです。
アメリカ人が最も好きな都市というアンケートなどでもシカゴがトップに来ることが多かったり、中西部というのはアメリカ人の心のふるさとであったりします。
中西部は、古き良きアメリカのイメージで語られるところの多いところです。
人々は非常にフレンドリーで、家族をとても大事にします。
日曜日には、必ず日曜ミサに行くような感じのイメージかと思います。
ウォーレン・バフェットもチャーリー・マンガーもオマハの出身でそのつながりが二人の関係を非常に深いものとして結び付けている大きな要素になっているようです。
両者とも、とても気さくな人です。
地元オマハでのつながりを、とても大事にしています。
企業の買収に関しても、経営者を徹底的に評価し、信頼に足る人という結論に達して、買収をしたら、後は、その経営者に全て任せるというスタイルです。
その信頼関係があるからこそ、逆に、信頼された側はより頑張るような形で上手く行っています。
こうしたことは、企業規模が小さいうちは、あまり問題なく出来るような気がします。
それぞれの企業体の社長に任せると言っても、どこで何が起きているのかをCEOは把握することが可能ですから。
経営者の視点で投資をする
傘下の企業が60社で総従業員数391,500人の企業を、25人の本社スタッフで仕切るのは通常不可能です。
傘下企業のCEOが、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーとコアバリューを共有し、行っているビジネスに合った経営能力を有していないとこれは不可能なことです。
バークシャーハサウェーが投資で有名ですが、それ以上に企業買収で大きくなってきた会社です。
バークシャーの投資(ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの投資)は、企業規模・投資資金規模の拡大の過程で、株式投資による部分買収よりも企業を丸ごと買収する方向にシフトしてきていると見ても良さそうです。
ウォーレン・バフェットとしては、株式投資は企業を部分買収することと当初から考えて分析しているので、企業買収もその延長線上にあります。
経営者の視点で投資をしていると言って良いでしょう。
こうした稀有な企業の運営は、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーのパートナーシップがあったからあり得るとも言えます。
長い時間をかけて選ばれた後継者
それゆえに二人とも90歳を超える年齢になっているので、後継者問題が大きな問題になっています(過去25年くらいずっと言われてきた問題ですが)。
昨年の年次株主総会ごろから表にかなり出るようになってきたのが、グレッグ・アベル(Greg Abel)とアジット・ジェイン(Ajit Jain)の二人です。
かなり長い時間をかけて選ばれてきた二人です。
アジットが保険ビジネスを、そしてグレッグがそれ以外と全体を見る後継者として紹介され始めました。
この二人に実際に経営が移った時に、バークシャーがどうなるのかが楽しみではあります。(その後、ウォーレン・バフェットはグループ全体の後継者としてグレッグ・アベルを選び、公表しました)
ただ、現時点でも極めて自律性の高い組織になっているので、スムースに継承され、従来とあまり変わらず運営されていくのではないかと思われます。
投資ポートフォリオは、時代に合わせて変わっていくでしょう。
こちらは、流石に変わらざるを得ないかと思います。
子孫に美田を残さず
また、中西部の文化に戻りますが、家族や友人、コミュニティを大事にする文化です。
ウォーレン・バフェットもチャーリー・マンガーも、尊敬する人物と言った時に、まず自分の父親というのを上げています。
そして、二人とも家族を大変大事にしています。ウォーレン・バフェットは、奥さんと別居、奥さんの死後、再婚しているし、チャーリー・マンガーも離婚、再婚を経験しています。
とはいえ、二人とも家族をとても大事にしていることには変わりありません。
ウォーレン・バフェットは、自分の父親からの影響もあるのだろうと思いますが、自分の子どもたちに、父親の資力に頼るようなことはさせないように教育し、実際に子どもたちには自立させる道を選ばせています。
投資を教えることもしていません。
バークシャーの後継者にもしていない。
これが出来る人はほとんどいないでしょう。
3人の子どもには、ウォーレン・バフェットの資産からすればほとんど誤差レベルの資金しか与えていません。
そして、資産のほとんどを占めるバークシャーの株式は、ゲイツ・メリンダ財団に寄付していくことが決まっています。
遺産も期待できない。まさに、子孫に美田を残さず、を地で行っています。
どんなに大変であっても正道・正攻法で進む
4回シリーズのインタビューの2回目を中心に今回の記事をまとめていますが、この2回目でもう一つ、とても大事なことできになったコメントがありました。
Taking the High Road(正攻法・正道を行く)ということです。
どんなに大変であっても正道・正攻法で進むことをチャーリー・マンガーが言い、ウォーレン・バフェットも賛同しています。
小手先の対処法は結局、大した成果は得られず、正攻法は非常に大変ですが、得られるものも多いということです。
ウォーレン・バフェットは、非常に割安であるという評価でテキスタイルビジネスを主業としていたバークシャーハサウェーを買収しましたが、これは彼にとっての最大の失敗と彼も認めています。
そして、最終的にテキスタイルビジネスを止めるまで約20年の月日をかけて処理をしています。初期のバークシャーの苦労は、彼の伝記的な作品に沢山語られていますので、読んでいただければと思います。
また、90年代に投資先のソロモン・ブラザースが国債入札スキャンダルで危機にあった時に、ウォーレン・バフェットは、懇意にしていた当時のソロモンのCEOであったグットフレンド氏に頼まれて、ソロモンのCEOになって立て直しの重責を果たしています。
ファイナンシャルバイヤーというか、単なる投資家であれば、そんな得にもならない仕事はしないで、ソロモンの株を売って終わりでしょう。
彼のビジネスヒストリーを見ていくと、そうした例が沢山あります。
投資家という枠組みでは小さすぎ、偉大な経営者であると同時に投資家でもあります、という表現をした方が良さそうです。
今回の教訓
家族・友人・コミュニティを大事にする。子供を甘やかさない、というのもありますね。
そして、課題に直面したら正攻法で攻める。正攻法で攻略すれば、大変だが得られるものも大きい。
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