配当株投資をされている方は多いかと思います。大きく振れる株価に比べて、安定的に収益をもたらしてくれる配当は、株式投資の上では重要な要素になります。
企業にとって、収益あるいは内部留保の使用使途としては、大きく分けて4つの方法があるかと思います。
- ビジネスへの再投資
- 株主への配当
- 自社株買い
- キャッシュで保有
ビジネスへの再投資
成長期の企業であれば、ビジネスへの再投資が最もリターンの高い投資、すなわち株主価値を最も高められるはずです。
企業の成長を考えた場合には、これが最も望ましい資金の使い方とも言えます。
急成長企業に配当を支払っていない企業が多いのはそうした理由からです。
株主への配当
逆に、配当が高いというのは、通常のケースでは、ビジネスは順調に儲かっているものの、成長期というよりは収穫期にあり、ビジネスの成長性自体は低いケースが多い。
安定はしているかもしれませんが、少なくとも成長性はあまり高くない。
キャッシュで保有
安定成長、あるいはキャッシュはたくさん入ってくるが成長はあまり見込めない企業は、株主還元として配当を沢山払うことができます。
自社株買い
ビジネスへの再投資をした場合に、投下資本に対してのリターンが落ちてしまうことになり、企業経営に非常に重要な指標であるROE(株主資本利益率)が低下してしまうので、配当として支払う、あるいは後述の自社株買いなどの方が、資金の有効活用になるという理屈です。
株価の成長性と配当利回り
株価の成長性と配当利回りは、二律背反的な特性があります。
タイミングによって、それを最大化することができるチャンスも生まれたりはします。
また、安定成長期の企業で、何かの理由で、株価が低下しているが、配当を削減するような心配のない銘柄であれば、一時的に上昇している配当利回りは、高い配当利回りに加えて、株価の上昇も期待できるというチャンスもあります。
市場環境によっては、株式のリターンの多くが配当で占められるようなケースもあります。
実際に、ロバート・アーノット氏(Research Affiliate社の創業者)の研究では、過去200年間の株式のトータルリターンは年率7.9%で、そのうち配当が5%を占めており、インフレが1.4%、実質増配が0.8%、値上がりが0.6%。
これは2003年のレポートです。今でもこれが当てはまるかどうかは分かりませんが、配当が、株式投資の重要な構成要素であることは間違いないかと思います。
若干脱線しますが、先ほど私は、高い配当は成長性が低いことの証左であると言いましたが、ロブ・アーノットの調査では、高い配当を支払っている会社の方が、成長性が高かったという調査結果も出しています。
統計的な分析をベースにしているので、全体としては、そういうことが言えるかもしれませんが、個々の投資に関しては、全く別で考えなければならないということは理解しておいてください。
ベストな高配当銘柄とは
配当によるリターンと株価のリターンがトータルリターンであるので、その割合としてどういう配分がベストであるかを一律に決めることは難しい。
株価が弱い時には、先ほどのロブ・アーノットの研究成果のように、配当は非常に重要になります。配当によるリターンは常にプラスですから。
四半期に入ってくる配当がともかく重要である、というケースでは、配当が高く、かつ安定していること。あるいは中程度の配当利回りだが、継続的に増配をしている企業であり、その状況は簡単には変わりそうもないようなもの。こうした銘柄がベストな高配当銘柄になるでしょう。
多くの方は、配当利回りもそこそこ高くて、成長性も高くて、増配を続けているような会社が、理想と考えるのではないでしょうか?
問題は、具体的にどのくらいの配当利回りで、どのくらいの成長性(収益の増加率)?ということかと思います。
そして具体的にはどのようなものがあるか、ということになるかと思います。
高配当銘柄・REIT(不動産投信)
高配当銘柄ということで、まずあげられるのが、REIT(Real Estate Investment Trust。不動産投信)です。
正式には株式ではありませんが、株式市場に上場していることもあり、株式と同様に扱われています。
法律で収益の90%以上を配当として払い出すことが義務付けられており、そのために税の優遇などが受けられるようになっています。
不動産投資の一つの形(流動性のある不動産投資)として人気を集めています。
債券の金利が低下する局面では、債券に似た性格であることから、債券との比較感から値上がりし、配当利回りが下がります。
(配当は同じでも株価が上昇するので)
REIT投資の場合は、その中に入っている不動産にどのようなものがあるかが、キーになります。
これまででも、人々の消費行動の変化から、Shopping MallやShopping Centerなどの調子が良くない。
これはE-Commerceの進展による影響が大きい。
コロナの影響も受けて苦しんだセクターでもあります。
パンデミックで世界中が混乱していた時期には、配当利回りは非常に高い状態でした。
例えば、業界最大手の一つ、サイモン・プロパティ・グループ(Simon Property Group、SPG)は価格が大きく下落し、利回り的には10%を越える水準となっていました(現在は7%台)
利回りの絶対水準としては、とても魅力的です。
ただ、価格が上昇して配当利回りが下がらないのは、通常のケースでは、市場が見逃しているのではなく、そうなる理由があるからです。
市場がその価格をつけているのは、どんな銘柄でもそれなりの理由があります。
市場は適正な価格を決めることに関してはかなり正確です。
(もちろん絶対ではないです)
したがって、価格が大きく下落して配当利回りが高くなった銘柄を購入候補として考える場合、価格が下落している原因は何か、その環境の中でも高い配当を維持できるのか?ということを調査の上判断するということが必要になります。
先ほどのSPGの例では、eコマースの進展によるアメリカの消費者の消費行動パターンが変化したのかどうか、今後どうなるのか、といったことがキーになるかと思います。
REITには、オフィスビルなどを中心としたもの、ヘルスケア施設を中心としたもの、倉庫を中心にしたものなど、さまざまです。
あるいはデータセンター施設を中心としたものなどさまざまです。裏付けとなっている不動産の動向について、大まかな方向感を持ってから投資した方が良いかと思います。
成長性がある配当株
成長性がある程度とれる投資先としては、薬品株があります。
特に大型の総合薬品メーカーが比較的配当利回りが高いです。
このセクターは、成長性が時期によってかなり出る時期もあるので、よく見ておくと意外に配当をもらいながら株価の成長もかなり見込めることがあります。
S&P500の配当利回りは、およそ2%程度であることを考慮に入れてみてください。
最後のCAH(Cardinal Health)は薬品卸です。
イーライ・リリーLLYは少し低いですが、全体に高いことが分かるかと思います。
そうした中で、ファイザー(PFE)とアッヴィー(ABBV)の配当利回りの高さは目立ちます。
知名度ではファイザーの方が高いし、会社としての規模も大きいですが。
現時点での成長性などから見ても。ABBVは注目に値します。おまけにPERも低い。
なぜそうなっているのかをチェックしたうえで、納得しておく必要があります。
薬品会社の場合、大型薬品(ブロックバスターと呼ばれます)が開発されると、一気に成長性が上がります。
イベント・ドリブン的な要素はありますが、配当が高い時は比較的買い時であることも多い。
そういう意味ではPFEもなかなか魅力的です。
すぐにはないにしても、長期では配当株は魅力的かもしれません。
高(好)配当銘柄というのは、数値化して万人に共通の形で示すことは難しいです。
それぞれが、配当と収益の成長性との関係で居心地の良いバランスのレベルで決まるものかと思います。
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