米国株投資をするにあたって、無視できないのが為替(ドル・円)の為替です。
円が高く、米国株が安い時に買い、円が安くなり、米国株が高くなれば、株でも為替でもプラスなので、とても大きなプラスになる可能性があります。
一方、円が安く、米国株が高い時に買い、その後円が高くなり、株価が下がったりすると、株でも為替でもマイナスになり、泣きっ面に蜂の状態になります。
為替の動きが、それなりに激しいので、ベストのタイミングを狙うのはとても大変です。それを解消し、影響を小さくする方法として抜群の力を持つのが、ドルコスト平均法(定期定額の積立投資)です。
まとまったお金をある時期に投資をするときには、それなりに考えておく必要がありますし、長期の投資であっても、その長期の間の為替の水準感が大きく変わりそうであれば、それに対応する必要もあります。
そこで、今回は、為替を動かす要因について、短期的要因と長期的要因についてご紹介します。
為替を動かす要因:短期的要因
短期的な為替の動きは、主に市場のセンチメントや短期的な経済データ、投資家の動きによって影響されます。以下が代表的な短期要因です:
① 金利差と金融政策の変化: 日本銀行やアメリカの連邦準備制度(FRB)が金利を変更すると、利回りの高い通貨に資金が流れやすくなります。例えば、FRBが利上げすると、ドルが魅力的となり、円安ドル高が進みやすいです。
② 経済指標の発表: GDP、失業率、インフレ率などの経済指標が予想を上回る(または下回る)場合、市場の期待が変わり、それに応じて為替が動きます。
③ 地政学リスクや突発的なニュース: 戦争、テロ、自然災害、政治不安などはリスク回避の動きを引き起こし、短期的に円買い(円高)が起こることがあります。日本円は「安全通貨」として知られ、不安定な状況では買われやすくなります。
④ 投資家のポジショニング: 大口投資家やヘッジファンドの売買動向が短期的な動きを左右します。特に、投機的なポジションの巻き戻しが急激な為替変動を引き起こすことがあります。
短期的な要因は「一時的な変動要因」であり、金利差や市場センチメント、ニュースの影響を強調します。
短期的な為替の動きは、しばしば投機的な取引によって引き起こされ、これが大きな変動をもたらすことがありますが、これらはあくまで一時的なものです。
具体的に言うと、短期的なポジション取りの主な目的は利益を得るためであり、実需(貿易や企業の資金移動など)に基づく動きではないため、市場が大きく動いたとしても、それは「ノイズ」のような一時的な変動であることが多いのが特徴です。
こうした投機的な動きには、ヘッジファンドや短期のトレーダーが参加しており、彼らはニュースや経済指標、政策の発表などに敏感に反応しますが、これらのトレードは最終的には反対売買(手仕舞い)によって決済されるため、元の水準に戻るか、もしくは長期的な基礎要因に沿った方向に戻る傾向があります。
このように短期的な投機的な動きが水準そのものを変える力は限られているため、長期的なトレンドを形成するのは、結局のところ、実需や経済の基礎的な要因です。
即ち、為替の水準がどう変わっていくかを考える時、長期的な要因にフォーカスすることが大切です。
為替を動かす要因:長期的要因
長期的な為替レートの動きは、国の経済の基礎的な要因や、マクロ経済政策、人口動態などに影響を受けます。これらの要因はゆっくりと作用しますが、為替レートに大きな影響を与えます。
① 経済成長率と生産性: 長期的には、各国の経済成長率や生産性の向上が通貨の価値に影響します。日本と米国の経済成長率に大きな差がある場合、ドルが強くなる傾向があります。
② 購買力平価(PPP): 物価水準が異なる国の間では、長期的には物価が均衡するように為替レートが調整されることがあります。例えば、日本で物価が安く、アメリカで物価が高い場合、長期的には円高が進む可能性があります。
③ 国家の貿易収支: 貿易黒字国は自国通貨が強くなる傾向があり、逆に貿易赤字が続くと自国通貨が弱くなる傾向があります。日本は長年にわたって貿易黒字国ですが、近年では貿易赤字が増え、円安要因として働くことがあります。
④ 人口動態: 長期的には、人口の減少や高齢化は経済の縮小につながり、通貨の弱体化を引き起こす要因となります。日本では高齢化が進んでおり、これは円の長期的な価値に影響を与える可能性があります。
ポイント
長期的な要因は「経済の基礎的な力」であり、経済成長や貿易、人口動態などの構造的な要素を指摘します。これにより、為替の動きが短期と長期で異なるメカニズムに基づいていることが明確になります。
経済成長率と生産性、購買力平価、貿易収支、人口動態などは、超長期的な視野で考えるべきことですので、それはそれでどう考えるべきかを考えるのは難しいですよね。変化はあまり明瞭ではないですから。
中長期的な水準に影響を与えそうな要因
中長期的な観点から、これまでとは異なる長期的な動き、あるいは、反対売買を伴わない大きな資金の動きなどを考慮に入れておくことは水準を変える可能性もあるので、重要です。
ドル買い圧力(円安要因):
① 米国の大手テクノロジー企業への支払い: 日本から米国への支払いが大規模である場合、これは確実にドル買いの要因となります。例えば、アップル、アマゾン、ネットフリックス、フェイスブック、グーグルなどへの支払いが毎年5兆円規模で行われているようです。その影響は無視できないほど大きく、持続的にドル高圧力をかける要因です。
② NISAによる海外資産への投資: NISAの普及により、個人投資家が海外の株式や債券に資金を投じることもドル買い要因です。日本国内の資金がアメリカなどの海外市場に流れることで、円安圧力が持続します。
ドル売り圧力(円高要因):
③ GPIFのポートフォリオ調整: 日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、5年ごとに基本ポートフォリオを見直しています。現在、海外資産と国内資産の割合は50:50です。そしてこの割合は、公的年金に共通です。
GPIFはこのウェイトを2025年4月に変えます。(現在どのように変更するかを検討中です)もしこれが5%調整されると、GPIFを始めとする公的年金(公務員向けの共済年金など)が約300兆円ありますので、15兆円の影響になります。
現在巷では、国内資産のウェイトが上がる(即ち外国資産を減らす)という予想が出ています。5%国内資産が増える(外国資産が減る)と約15兆円のドル売り円買い要因になります。これは一時的な要因ではありますが、ドルの売り切りなので、確実に円高圧力をかけます。
④ 金利差の縮小: 日米の金利差が縮小すれば、これも円高要因となります。特に、利上げが止まり、あるいは利下げに転じた場合、資金の流れが円に戻る傾向が強まるでしょう。
結論:
現状のドル買い要因とドル売り要因を総合的に見ると、米国のテクノロジー企業への大規模な支払いとNISAを通じた海外投資がドル高圧力として存在している一方で、GPIFによるポートフォリオ調整や日米金利差の縮小が円高圧力をもたらします。
このため、円高が進むとしても、かなりマイルドである可能性が高いと考えられます。特に、ドル買い要因が根強く存在するため、急激な円高にはつながりにくい状況かなと推測しています。
(以前の1ドル110円というような水準には行かないだろうと言う意味でのマイルドな円高です。1ドル130円割れということも十分あり得るかと思ってはいます。)
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