【米国株式週間レビュー】大型グロース株に暗雲? 2023年8月12日

米国株式週間レビュー

先週(8/7~8/11)の米国市場は、ダウがプラスで終わったものの、S&P500は若干のマイナス。一方で、NASDAQ、NASDAQ100、Russell2000は、大きく下落しています。

NASDAQ苦境

特に、テクノロジーを中心とした大型成長株が大きく下げています。テクニカルから判断するとNASDAQは、特に厳しい環境にあると言って良さそうです。

S&P500は辛うじてホールドしていますが、油断は出来ないかという状況にあります。

金利は上昇

前週の悪い流れを引き継ぎ、不安定な環境の中で、インフレ指標はインフレが根強いことを示しています。CPIは予想より若干低い数字で出てきたものの、PPIが予想より若干高い数字で出てきました。

CPIの数字がポジティブで大きく上昇したものの、引けにかけて売られ、僅かな上昇にとどまるなど、市場心理は急速に不安定になっていることが分かります。

その地合いで金曜日のPPIが若干強かったこともあり、2週連続のマイナスということになってしまったという感じです。

財務省の国債(財務省証券)発行の増額計画の発表、それを受けた米国国債の格下げ(AAA格を失った)などの影響で、債券市場も不安定でした。そこにインフレが期待ほどには抑制されていないというニュース、英国のGDPが予想より強い(インフレ継続?)というニュースなども相まって、金利が上昇しています。

10年金利は4.03%→4.15%へと上昇しており、金融引締め政策から中立化への動きが先延ばしになるという見方が強くなっています。

金利の高い状況の継続は企業活動にはポジティブではありません。終盤を迎えた業績もこうした状況を跳ね飛ばすようなものではありません。

マーケットリーダーの失速

ここのところマーケットを牽引してきた大型グロース、テスラ(TSLA)エヌビディア(NVDA)などが今週も大きく売られ、テクニカル的には売りサインが出ていることなどで、大型グロース株先導による市場の上昇については黄色から赤色のサインに変わりつつあるように見えます。

基本的なマーケットビューは変わっていませんが、短期的には要注意と見て良さそうです。

チャートによる市場の分析

NASDAQ

NASDAQは21日移動平均線(これは上のチャートには表れていません)を下回っているのですが、先週の動きで50日移動平均線をも下回ってしまいました。

50日移動平均線を決定的に下回ってしまうと、一旦は売りシグナルと見る必要があるので、要注意です。

S&P500

S&P500も21日移動平均を下回っているので、短期的には上昇トレンドに戻れないでいるのですが、幸い、50日移動平均、200日移動平均は上回っているので、中長期上昇トレンドは維持されたままかと思います。

NYダウ

この3指数の中では、今年最も遅れていたNYダウですが、足元の状況は最も安心できるものです。

50日移動平均、200日移動平均に加え、21日移動平均線も越えて推移しています。今最も安心感のある指数になっています。

セクターの状況

7週連続で原油価格が上昇していることもあり、この週で最もパフォーマンスの良かったのはエネルギーセクターです。ただ、今年の年初からでは上昇は僅かです。

一方、コミュニケーション、テクノロジー、一般消費財サービスなどのグロース系セクターが足元急速に不振となっています。

半導体セクターが-4.99%の下落に現れているように、ここの所の市場を牽引していたAIテーマでの上昇が崩れてきてしまっています。

マーケットリーダーが不在となってしまったこともあり(一時的かもしれませんが)、先の上昇のリーダー銘柄が見えなくなってしまいました。

主要銘柄の動き

ここまでAIテーマで市場を牽引してきたNVDAですが、AI関連企業の決算が振るわないものが出てくるなど、ネガティブ要因が続いたこと、そしてNASDAQ指数の不振などから、利食いが出やすい状況下と思います。

実際、金曜日の引けで50日移動平均を-5.1%下回っており、売りシグナルが出たと判断されています。簿価の高い最近購入した方は外した方が良いかもしれません。

簿価の低い投資家や超長期投資家の場合は、利食いを少し入れる、何もしない、という両方の選択肢があるかと思います。しかし、しばらく忍耐が必要になる可能性があります。

8月23日に予定されている業績発表で今の軟調が短期で終わるか少し長いものになるかが決まるかと思います。

AIのテーマで上昇してきましたが、こうしたテーマの場合、まずはハード系の企業で業績に大きなプラスが出てくるかと思います。

AIを使ったサービス系の企業は、既にかなりありますし、今後も沢山でるかと思いますが、サービス系の企業はかなり淘汰されていくと思います。サービス系の企業の株が長期で上昇するのはだいぶ先の話かと思います。

既に実績を出しているNVDAは相対的に当面は強いかなと思っています。

TSLAも50日移動平均を下回り、売りシグナルが出てしまったようです。対応の仕方はNVDAのケースと同じかと思います。簿価との関係や投資のスタンスで異なります。

為替

米国の金融政策の引き締めスタンスが、想定より少し長くなる可能性が出てきたことで、金利が短期も長期も上昇しています。これにより為替はドル高円安方向に動いています。金曜日には、ほぼ145円まで行ったようです。

前回のBOJの為替介入水準(145円07銭)に近づいてきているので、為替市場は若干慎重になりつつあるようです。

終わりに

既にお盆休みに入られた方も多いかと思いますが、如何お過ごしですか?

大して計画を持っていた訳でもないのですが、それでもあまり天気が悪くなることを想定していなかったので、今後台風7号の影響で行動の制限が入りそうで、「さて、どうしたもんかい」と思っています。

台風7号が直撃する地域では、被害が出ないように祈っています。

相手が自然現象なので、どうしようもない。こちらの対応を考えるしかない。
(人間の経済活動が、災害の激甚化の根本原因にある可能性は非常に高いのですが、人間の行動を全体として急激に変えることも難しいのが悩ましい)

台風と熱中症に注意してお過ごしください。

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