【特別講義】金利と債券(4)

投資

前回は、金利と価格の動きについての解説をしました。

金利が上がると債券価格は下がり、金利が低下すると債券価格は上がる。

債券から見れば、価格が下がると金利は上がり、価格が上がると金利は下がる。

債券を持っている人からすれば、金利が下がると持っている債券の価値が上がる(価格が上がる)のでポジティブであり、金利が上がると債券価格が下がるのでネガティブということになります。

これから債券を買おうとする人にとってみれば、金利が高く債券価格が安い方が良いですが、金利が低く債券価格が高い時は、投資タイミングとしては良くない。

基本的に債券は、金利の動きによりほぼ一斉に全ての債券が同じ方向に動くので、個別性が少ないため、投資のタイミングに注意を払う必要があります。

今回は、前回予告した通り、金利とインフレの関係、そして外国債券投資における金利と為替の関係についてお話します。

インフレと金利

インフレと金利の関係を考えるとき、二つの側面から考えることができます。そしてその結果は当然ながら同じところに帰結します。

インフレと市場金利の関係

インフレは、例えば、昨年1000円で買えたものが、全く同じものであっても、今年は1050円でないと買えないというような状況です。即ち、昨年の1000円と今年の1000円では、価値が異なる。昨年の1000円に比べて、今年の1000円の価値が低い(購買力が低下)。

このような状況であることは、昨今のインフレの状況を経験している皆さんにはよくお分かりかと思います。

これを債券で考えてみましょう。

債券は毎年クーポン(利金)をもらい、満期には元本が返ってくる契約の証書です。例えば、100万円額面分の5年満期の債券を購入したとしましょう。

購入直後からインフレが毎年5%で続いたとしましょう。そうすると、今100万円のものは、5年後には127万6282円になっています。(1.05の5乗)5年後に100万円返ってきても、同じ購買力が得られないので損してしまいます。

では、5年後に満期が来る債券を買うとして、既に毎年5%でインフレが起きることが既知であった場合には、今の100万円と同じ購買力が得られることが必要になります。

途中のクーポン(利金)のことを考えなければ、最低限価格は100/127.6282即ち、額面の78.3526%程度でなければなりません。

更にクーポン(利金)も考慮して、現行の金利水準に合う価格が数学的に決定されます。いずれにしても、パー(100)よりも小さい水準になります。

即ち、インフレが上昇すると、発行されている債券を買うのに妥当な価格は低下していきます。

価格が低下するので、金利は上昇します。

逆にインフレが想定より低くなった場合は、債券の将来の価値が上昇する→現在の価値も上昇するので、金利は低下します。

以上から以下の規則性が導き出されます。

インフレ上昇→金利上昇

インフレ低下→金利低下

インフレと政策金利との関係

インフレを適正水準に維持することは、中央銀行の主要目的とされています。

これは日本銀行でも、アメリカの連邦準備銀行(FRB)でも同じ(FRBの場合、インフレのコントロールと失業率を抑制することも役割に入っています)

中央銀行は、インフレをどうやって抑制していくのでしょうか?

中央銀行の持つ政策手段としては、市中に流れるお金の量をコントロールすることによって、インフレを抑制しようとします。その主たる手段が、政策金利のコントロールです。(中央銀行と市中銀行とのオーバーナイトの貸し借りの金利です)

これを基準に、それ以外の金利は残存期間ごとに金利が決まっていく仕組みです。短期金利は政策金利の影響を受けやすいが、中長期の金利は、それに加えて金利が先行きどう動いていくかの思惑をも反映します。中央銀行は残念ながらそこまではコントロール出来ません。

インフレの上昇は、市中にあるお金が多いので起きることが多い。したがって、市中のお金を吸い上げる(市中に出回るお金を減らす)必要があります。そのためには金利をどうしたら良いか?

金利を上げると、借りる人は借りにくくなりますし、お金を使うよりは銀行に預けようというインセンティブが働きやすくなります。その結果、市中に出回るお金は減ります。

即ち、インフレの抑制のためには、金利を上げれば良い。

一方、金利を上げることは、貸出金利も上昇しますし、市中に出回るお金を減らすことなので、経済活動に抑制的に働きます。逆に考えれば、景気の悪い時には金利を下げれば、市中にお金が出回り安くなり、経済活動が活発化しやすい。

景気の悪い時には、中央銀行は金利を低下させて、経済の活性化を図ります。

こうやってみると、債券投資家にとっては、経済が良く金利が高い時は、あまり良い時ではなく、経済活動が低下し、金利が下がっていくときが債券投資には絶好ということになります。

なんだか、人の不幸を喜んでいるようで、ちょっと後ろめたい。

景気のサイクルで景気の良い時、悪化する時期、悪い時期、回復する時期とあるように、債券投資もサイクル的になっていくことが分かるかと思います。

分散投資として、株式に対して債券も保有するようにお勧めしていますが、債券は変動幅が大きくない上に、全体として一方向に行きやすいこともあるので、単純にベタで持っていてもあまり良い結果に繋がらないことが多い。

金利の状況などを見ながらある程度動かして行かないと良い結果にならないことも多い。投資商品というよりは、資金運用商品の性格が強いかと思っています。

株投資の価格変動の大きさを和らげる意味で、分散投資の重要なパーツであることは間違いないです。

海外債券投資における金利と為替の関係

単純に米国債券だけ考えてみましょう。

債券価格は金利で決まりました。

為替は、二国間の金利差で決まります。そして、一般的には金利が高い方が強く、低い方が弱いという関係になります。

日米で考えると、日本の金利が変わらず低位にある場合、米国の金利が上がると、ドル高になります。逆に米国の金利が低下する場合、ドル安になります。

米国債券への投資ということを考えてみましょう。

米国の金利上昇→ドル高そして債券価格低下

米国の金利低下→ドル安そして債券価格上昇

米国の金利が低下して債券価格が上昇し、債券投資に良いようでも、為替が円高に行ってします(ドル資産の評価額が低下)。

逆に金利が上昇し、債券価格が低下しても、為替がドル高になり債券価格の低下の影響は小さくなります。

債券価格と金利が逆方向に動いてしまうので、どちらの影響が強いかで、投資リターンが大きく異なってきます。悩ましいです。時に、米国の金利が下がると同時に為替がドル高になることもあります。こういう時は、日本からの米国債券投資にとっては絶妙のタイミングになります。

金利は上がるは、ドル安円高になることもあり、この場合は最悪かもしれません。

債券は価格変動が大きくないのに、変動の大きな為替の影響を受けるので、為替ヘッジ付の投資信託を買うなどの方策が取られています。

ただ、為替ヘッジがコストばかりかかってしまう時期(ここ1~2年はそんな感じでした)もあり、常に為替ヘッジ付が良いとも限らない。

外国債券投資ってそういう意味では難しいですね。

必ず儲かるとは断言できませんが、価格変動の大きさが株式に比べると小さいこともあり、ポートフォリオにおける株式部分の変動を債券投資で相殺するような効果を得るという意味で意義のあるものと考えます。

また、十分資産を作った人からすれば、資産を増やすよりも安定的にキャッシュフローが欲しいと言うケースもあるので、そうした人には債券投資は悪くないです。

長くなってきましたので、今回はこれくらいにします。

次回は、債券の安全性の問題(根本的な問題です)や、格付けの話、などの話をして、債券投資をどう考えていくかなどについてお話して締めくくろうと思います。

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