先日、Bloomberg(金融向けニュースサイト)に以下のような記事が載っていました。
定年退職前の資産計画に落とし穴-老後の夢壊す「シークエンス・リスク」を避けるには
老後資金の議論では、ほぼ「いくら必要か」「何%で運用できるか」といった議論に話が集中しがちです。これは、以前、金融庁が出したレポートに2,000万円必要と掲載されていたことなどが、さらに火をつけた感じになっています。
しかし、実はそれ以上に重要なリスクがある、というのが上のリンクの記事の内容です。これは「シークエンス・オブ・リターン・リスク」(Sequence of Return Risk)と呼ばれるものです。
これは、
“どの順番でリターンが来るか”によって、同じ平均リターンでも結果が大きく変わる
というものです。
シークエンス・リスクとは何か?
非常にシンプルに言うとこうです。
退職前後に大きな下落が来る
生活費のために資産を取り崩す
損失を確定しながら資産が減る
その後に市場が回復しても、元の資産に戻らない
つまり、
👉 「下落 × 取り崩し」が同時に起きることが最大の問題
です。
Bloombergの記事でも、
「退職の5年前〜退職後5年」が最も危険なゾーンと指摘されています。
なぜこれが致命的なのか?
同じリターンでも、順番で結果が変わります。
ケース比較(イメージ)
A:最初に上昇 → 後で下落
B:最初に下落 → 後で上昇
👉 平均リターンは同じでも、Bの方が資産は大きく減る
理由は単純で、
下落時に取り崩す
= 安値で売ることになる
からです。
これは投資の基本に反していますが、
生活費が必要な以上、避けられない行動です。
実は「長期投資」では防げない
ここは誤解が多いところです。
「長期投資なら大丈夫」
「いずれ戻る」
👉 これは取り崩し期には通用しません
なぜなら、
取り崩し=時間を味方にできない
複利が逆回転する
からです。
このリスクをどう考えるべきか
結論から言うと、
👉 完全に回避はできないが、コントロールはできる
です。
シークエンスリスクへの対策
Bloombergでも同じ結論で、
解決策は「複雑な商品ではない」と明言されています。
【対策①】現金バッファ(最重要)
最も重要な考え方です。
基本
1〜3年分の生活費を安全資産で持つ
記事でも
不足分の12ヶ月分をMMFで保有
という例が出ています。
なぜこれが第一番目の対策となっているのか?
下落時に
👉 株を売らなくて済む
これがすべてです。
注意点
ただし、持ちすぎるとリターン低下(機会費用が大きくなる)
少なすぎると防御不能
👉 「安心とリターンのトレードオフ」
【対策②】資産の“役割分担”(バケット戦略)
これは非常に有効です。
例
短期(0〜3年):現金・MMF・短期債
中期(3〜10年):債券・配当株
長期(10年以上):株式
👉 使うタイミングで資産を分ける
本質
「いつ使うか」でリスクを決める
【対策③】分散(ただし誤解あり)
記事でも
同時に同じ方向に動きにくい資産を組み合わせる
とあります。
ただし重要な現実があります。
👉 危機時は分散が効かず、全部下がることもある
(2008年のリーマンショック時や、2022年の株+債券同時下落など)
なので分散は
完全防御ではなく
ダメージを“ならす”もの
【対策④】取り崩しの柔軟性
これ、実はかなり効きます。
具体策
下落年は支出を減らす
インフレ調整を一時停止
引き出し額を固定しない
👉 “支出側で調整する”
【対策⑤】リスクを上げて取り返そうとしない
これは重要な警告です。
記事でも
遅れを取り戻そうとしてリスクを上げるのは誤り
と明確に否定されています。
👉 ここで無理をすると破綻確率が上がる
老後資金にはいくら必要か? 4%ルールの考え方
ここが本質です。
シークエンス・リスクを考えると、
👉 「ギリギリ設計」は危険
実務的な考え方
年間支出の不足想定額(総支出ー受け取り想定年金額) × 25〜30倍(目安)
取り崩し率:3〜4%程度
4%ルール総資産の年4%程度の支出であれば、30年間は大丈夫という経験則
ただし重要なのは
👉 「余裕(バッファ)」を持つこと
支出は年齢とともに減少方向に進むが、医療費でカバーできないものや、公的補助だけで浜かねない介護費用などが発生する可能性もあるので、多めに持つことは必要です。
個人的には90歳で使い切ってしまうくらいにしたいとは思っていますが、それ以上に長生きしてまい、子供に迷惑をかけるリスクも存在するので、余裕はあったほうが良いかなと。
まとめ
シークエンス・リスクとは
👉 “タイミングの悪さ”が人生を壊すリスク
です。
そして対策はシンプルです。
現金バッファ
資産の役割分担
分散
柔軟な支出
無理をしない
👉 派手な戦略ではなく、設計の問題
このシークエンス・リスクは、資産形成期では時間を味方にしているので、長期投資をしていればあまり意識することはない。
ただ、実は、資産形成期であっても、どの時点で高いリターンが出て、どの時点で大きなショックが来るかで、結果としてのリターンは大きく変わってきます。(投資を最初に1回だけして、あとじっと待ち、引き出しもしないのであれば、シークエンス・リスクはありません)
ただ、老後の資産を取り崩す時期に、どのタイミングで大きなショックが来るかで、天と地との差が出てきます。資産形成期には味方であった時間が、味方してくれなくなります。むしろリスクを高める要因にすらなります。
現金もしくはそれに準じるものをある程度(支出の1~3年分)持つのは、重要な戦略と考えられます。
せっかく、老後に安心して暮らせるようにと形成してきた資産です。シークエンス・リスクに振り回されることなく、安心して暮らせるようにしていきましょう。
資産形成期と資産取り崩し期では、投資におけるルールが変わります。同じゲームではない、ということをきちんと理解し、意識してポートフォリオを移行させていきましょう。
後記
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